ロシア人セレブ、スポーツ選手らが停戦を呼びかけ

国民を闇に包む「愚民政策」の一方で、SNSやツイッターでは反戦論も発信されている。

英国で活動するロシアのベストセラー作家、ボリス・アクーニン氏は「ロシア人が精神を病んだ独裁者の蛮行を止められなかったことは、ロシア人全員の責任だ」と強調した。

1990年代に日露交渉に携わったゲオルギー・クナーゼ元外務次官も「精神異常者の愚行を止められなかったことをウクライナの人々に謝りたい」と書いた。

経済学者のアンドレイ・チェレパノフ氏は「真実を伝えるメディアがあれば、戦争終結を求める反乱が起きたはずだ。クレムリンはそれを極度に恐れた」と指摘した。

このほか、大統領選に出馬したタレントのクセニア・サプチャク氏、映画監督のロマン・ボロブエフ氏、テニスのダニール・メドベージェフ氏、ノーベル平和賞を受賞した「ノバヤ・ガゼータ」紙編集長のドミトリー・ムラトフ氏、「アルミ王」と呼ばれた新興財閥のオレグ・デリパスカ氏ら多くのセレブやスポーツ選手らが停戦を要求した。

即時停戦を求めるオンライン署名は100万人を超え、医師や建築家ら各業界の抗議書簡も発表された。

2021年11月4日、グム百貨店が見えるモスクワの赤の広場
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50都市以上で反戦デモが行われているが…

詐欺罪などで投獄されている反政府運動指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は獄中から発信し、プーチン大統領を「狂気の皇帝」と非難。「ウクライナ侵略戦争に気づかないふりをする臆病者の国になってはならない」とし、不服従の抗議デモを毎日行うよう国民に呼びかけた。

ナワリヌイ氏は2020年夏、シベリアで化学兵器の一種であるノビチョクを何者かにもられて重体となり、ドイツの病院で療養。昨年1月に帰国した際、空港で逮捕され、有罪となった。

ナワリヌイ氏らの呼びかけに応じ、2月24日の開戦以来、50都市以上で反戦デモが週末に行われ、数万人が参加。3月6日までに約7000人が拘束された。

ロシアでは、選挙不正や年金改革に反発するデモは発生するが、反戦デモは異例だ。とはいえ、モスクワのデモは3000人規模にとどまっており、参加者の多くは警察に連行された。政権に打撃を与えるには10万人規模に広がる必要がある。2011年の下院選の不正に反発する反プーチン・デモは、若者や中産階層を中心に10万人以上に膨れ上がり、警察は座視するだけだった。