これから食のEC化が進む
食の分野もこれからはネットを通じて販売する「EC化」が進むといわれています。いまはそれに向けた過渡期でしょう。無印良品も生活のすべてをカバーできるだけのノウハウを手にしたら、いつかそちらのほうに進出するはずです。でも食品を扱ったことがなければ、いきなりEC化などできない。そのための布石として、生鮮食品に進出したのでしょう。
これからは無印のように、どんどん変身していく企業が生き残れる時代です。ずっと同じところにとどまっているところは、時代の変化に対応不能になってダメになっていくでしょう。
たった1つの懸念点
また無印良品は、高齢者の自宅付近まで出張販売をしたり、相談コーナーで地域の人たちの困りごとを受けたりと、地域密着型のお助け企業になろうとしています。
堂前宣夫社長は、コンサルティング会社出身で、明確なビジョンを持っているところが素晴らしいのですが、チャレンジングな出店目標と利益目標を掲げられているところだけが少し心配です。「地域密着型で人口60万人以上のところに店を置いていったら、これくらいになるだろう」という計算はもちろん可能なのですが、いかんせん目標値ができると、それが目的になってしまう。
「これだけ売り上げを上げなければいけない」となると、「地産地消なんて言っていたら売り上げは達成できない」「どこのものでもいいから仕入れて売りまくれ」と店長が言い出したら、もうそこからコンセプトが崩れていく。「最近、無印ってちょっと変わっちゃったね」と思われることがあったら、それこそ無印良品の危機でしょう。
港南台バーズの店内は通路を幅広くとった、アメリカの高級スーパーであるホールフーズのようなゆったりした雰囲気でした。このまま焦らずにじっくりと「食」の分野を充実させていってほしいと思います。
(構成=長山清子)