これまでの仕事人生は「準備期間」
50代は60歳という大きな節目を前に、心は揺れやすいだろうと思います。50代の自殺者が多いのは、50代の人生の悲哀と無関係ではないと思います。
だからこそ、50代での切り替えは大事だと思います。本当にやりたかった仕事は何か。子どものころになりたかった職業を思い浮かべる。学生時代にあきらめていた夢を思い出す。健康であれば、50代から始められることは結構あるはずです。成功と失敗。経験も豊富です。
それまでの仕事人生は、ある意味、「準備期間」「修業期間」だと思い直したらどうでしょうか。それまでの経験をベースに、より充実した仕事にトライするという発想転換です。NGO、NPOの活動もいいと思います。過去の発想、過去の環境をいったん洗い流し、自考してみる。50代のモチベーション喪失は、あまりにももったいない。50代が元気にならないと社会の大きな損失になってしまいます。
「大事なのは成功よりも成長」
私の友人は銀行で“出世”できませんでした。退職したら、貯蓄を投じて「子ども食堂」を立ち上げる計画を立てています。彼は数年前、がんの手術をしてから、こう言うようになりました。「自分が生きた証しとして、人の役に立つ仕事をしたいという思いが強くなった」。その夢が「子ども食堂」です。
ニューヨークで知り合った不動産業の70代の日系人男性は言います。「この年になっても、やりたい夢や新しい目標が次から次へと湧いてきます。50代なんてスタートするのにまったく遅くない。これからですよ」。
人生はこれからです。年金がもらえる年齢は遅くなることはあっても早まることはありません。健康なうちは働いた方が何かと得でもあります。50代は何かと身体にガタが来始めますが、健康でさえあれば、あと20年くらいは、しっかり働けます。20年もあれば、立派な会社を育て上げることだってできるかもしれません。「自分は成功した」と思った瞬間に、その人の成長は止まってしまいます。いろいろな経験をして、いつまでも人として成長し続けられれば、それは人生の充実につながるはずです。大事なのは「成功よりも成長」だと思います。