“個の尊重”を理念に掲げるリクルート

例えば、創業60年のリクルートは、独特の企業文化を掲げ、成長を続けてきました。1970年代から「個の自立(自律)」を組織文化に掲げ、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という社訓を浸透させてきました。

社員は経営トップに依存せず、自ら考えて社内で数多くの新規事業を立ち上げてきました。会社は、社員が退社して起業するケースを歓迎し、同時に、その起業をビジネス拡大につなげ、社員と会社がウィンウィンになる文化を大事にしてきました。

リクルートホールディングスの峰岸真澄社長(当時)は次のように言いました。「企業理念のひとつに“個の尊重”というものがあります。個を挙げる企業は珍しいと思いますが、これは個人への期待であり、個人の志や欲望をつぶさずに伸ばしたり広げたりした方が成長するからです。例えば、当社の企業文化を表す風景として、新入社員が『先輩、これどうしたらいいでしょう』と尋ねると、『どうしたらいいと思う?』と聞き返される。(中略)まず、自分で考えざるをえないのです」。社員が自考しています。

企業の多くが社の方針の軸を会社側に置いています。しかし、リクルートは社員が自分の成功のために自考し、結果的にそれを会社の成功につなげるという手法を取り入れてきたといいます。社員全員が自考できる文化を持ったユニークな会社だと思います。

出世競争や定年に直面する50代は愚痴が多い

「批判や愚痴が一番多いのは50代の男性だ」。某会社で苦情などを受け付ける担当の知人はこう言います。50代といえば、会社社会だと、昇進、出世、出向、役職定年、準定年、リストラに直面する年齢です。会社人生の形式上の“成否”が見えてくる年齢です。ストレス、悩みは想像に難くありません。

愚痴もこぼしたくなるでしょうし、知識も肥えていて何かと批判したくなる気分も理解できます。正論を貫いて、まっとうに仕事をしてきたのに、理不尽な組織の論理で思うような会社人生を送れなかったとしたら、落ち込む人もいるでしょう。

でも、思い詰めることなどありません。「社長は、自分より有能な人材を後継者に選ばない」。よく言われる言葉です。自分より優秀な人材を後継に選べば、自分の存在が排除され、自分の影響力が行使できなくなるから、イエスマンを選ぶという理屈です。組織人事の一面を表しています。組織とはそんな程度だと割り切ってもいいのかもしれません。「自分の人生が否定された」「自分の能力が足りなかった」などと思い詰めるのはナンセンスかもしれません。会社の価値観に一方的に支配されるのは実にバカバカしい。