周囲の人は否定せず、安心感を与えてほしい
「周囲はどのように接したらいいか?」という質問もよく頂きます。
あくまで私なりの回答になりますが、「何があっても、あなたはここにいて大丈夫だよ」と心の居場所をつくること、安心感を与えることかもしれません。
具体的には、もし本人が痩せることに価値を見いだしている場合は、「そんなことする必要ないよ」と、頭ごなしに否定したり説得したりするよりも、どうして痩せたい気持ちになっているのか、痩せることで最終的にどんな気持ちを手に入れたいのかを注意深く観察し、不安を抱いている気持ちに寄り添うことです。根性論で引っ張ったり後押ししたりするのではなく、横にいるようなイメージです。
また、拒食症だからと無理やり食べさせたり、過食症だからと勝手に食べ物を隠したりする行為は、家族としての信頼関係の溝を深めてしまうと思います。
食べ方をどうにかしようとか、急いでどうにか治そうとするよりも、一緒にどこかへ行ったり同じ物事に取り組む姿勢で居てくれる方が、心のつながりを感じて安心できるのではないでしょうか。
「完璧じゃなくても大丈夫」と本人が考えられるようにさえなれば、肩の力が抜け、「○○でなければ」という思考から、少しずつ解放されていく気がします。
ほかの人の体験から「ひとりじゃない」と知る
摂食障害や、偏ったボディイメージにとらわれた経験を描いたコミックエッセイなど、10代の子供たちにも読みやすいイラスト入りの書籍が発売されています。
きっと渦中にいる子供たちも、「この気持ちは、自分ひとりじゃないんだ」と共感すると思いますし、当事者ではない方にも、どんな心理状況なのかがわかると思うので、おすすめの3冊をご紹介します。
おちゃずけ『10代のための もしかして摂食障害? と思った時に読む本』(合同出版)
hara『自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ』(KADOKAWA)
竹井夢子『ぜんぶ体型のせいにするのをやめてみた。』(大和書房)
また、コミックではありませんが、「痩せたい気持ち」や「愛されたい気持ち」がどこから来るのかを人類学者がたどった書籍、磯野真穂『ダイエット幻想』(ちくまプリマー新書)もおすすめです。
私にとって摂食障害は、行ったり来たり試行錯誤を繰り返しながら「この世界で生きていていいんだ」「大丈夫なんだ」と少しずつ感じていくことで回復に向かう印象がありました。
渦中で悩んでいる当事者の方も、周囲で支援する方も、つらい時はどうか1人で背負いこまず、カウンセリングや自助会、サポート団体などを活用して、人とのつながりを持つことを忘れないでいただきたいと思います。
また、今回ご紹介した内容は、あくまで経験者としての私の意見になりますので、必ずしもこのやり方が正解と言うわけではありません。
1番大事なことは、食べることに問題を抱えたご本人が無理せず生きやすくなることなのだと思います。