衆院選と参院選の最大の違い

最も強調したいことは、この選挙の結果、保守の自民党にリベラル路線の立憲民主党が対峙たいじする「保守vsリベラル」の構図が、小選挙区の導入後初めて、明確に確立されたことだ。平成の時代に長く求められてきた「保守二大政党」の構図が、ようやく崩れたのだ。

「世間的な風評」と大きく異なる評価だとは承知している。だが、一度ステレオタイプな論評を忘れ、選挙結果の数字を虚心坦懐たんかいに見れば、こうした見方が提示されても、別におかしくはないはずだ。私たちの政治観が、あふれる偏った情報によっていかにゆがんでしまうかには、常に意識を向けていたい。

ともかく、2021年の政治は、2010年代の政治状況を大きく変えて幕を閉じた。自民党が政権を奪還して第2次安倍政権が発足してからの10年近い政治に一区切りがつき、2022年は新たな政治状況の中で各政党が戦う必要がある。

では立憲民主党にとって、新たな政治状況とは何であり、何とどう戦うべきなのか。ここでようやく話が冒頭に戻るが、つまりは「維新から野党第1党の座をいかに守るか」である。

小選挙区制は政権与党と野党第1党を中心とした1対1の戦いだ。選挙戦では与党と野党の第1党が有利になる。政権を争う二大政党が一度確立すれば、その後は野党第1党と第2党の交代は難しい。

しかし、参院選には複数区がある。ほとんどの選挙区で野党が候補一本化を迫られる衆院選と違い、複数区や比例代表における「野党間競争」の持つ意味が大きい。野党第2党の日本維新の会が目指すのは、野党第1党となり政権への挑戦権を得ること。維新にとって目下最大の敵は、自民党の岸田政権以上に、立憲民主党なのである。

マイクを手にメモを取るジャーナリスト
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メディアによる「維新上げ」の風が吹き荒れている

先の衆院選以降「世間的な風評」はすっかり「維新躍進、立憲惨敗」のイメージ一色に塗り込められている。「維新が野党第1党をうかがう勢い、危機感を抱く立憲」といったトーンの論評がこれでもかと流され、政界の「空気」が強引に作られていく。

典型例が1月21日の朝日新聞朝刊の記事「維新の矛先、首相も立憲も」だ。20日の衆院本会議の代表質問で維新の馬場伸幸共同代表が、月100万円の文書通信交通滞在費(文通費)について「自民と立憲の事実上の『談合』で(抜本改革が)先送りされた」と発言したことを好意的に取り上げた。何しろ文末がこうだ。

「馬場氏は記者団に語った。『与党にも野党にも言うことを言う。これが是々非々の政治だ』」

維新幹部の発言で記事を締める。ここが見出しにもなっている。見得を切る歌舞伎役者を見るようだ。馬場氏の発言を無批判に持ち上げていると思われても仕方がない。

立憲は馬場氏の発言について「『談合』は事実と異なる」と批判しているが、馬場発言の問題は「立法府(与野党)が行政府(岸田政権)に対し諸施策を問いただす場」である国会で、答弁に立てない野党を批判する非常識さにある。こういう場面で正しいパンチを繰り出せない現在の立憲には歯がゆさを禁じ得ないが、ここで押さえるべきは「メディア環境が完全に『維新上げ』の状況のなかで、立憲は参院選までの半年を戦わなければいけない」ことである。