5類引き下げ賛成派の意見

東京都では新規感染者が連日1万人を超え、病床使用率も50%を超える事態(本稿執筆時点)となっている。

一方、前回のデルタ株による第5波に比して感染者数が多い割には“重症者”がさほど増えておらず、感染者の症状は概してごく軽症で、それほど恐れる必要はないのではないかという楽観論がテレビをはじめとしたメディアで流されている。

そして何より2年以上におよぶマスク着用の“義務”、旅行や宴会、イベントの中止や延期、会いたい人に自由に会えないという不自由な生活に「いいかげんウンザリだ」との鬱憤が限界にまで蓄積してきている。これらが「新型コロナは季節性インフルエンザと同等でも良いのではないか」との意見が増えてきている理由であろう。

では「新型コロナを季節性インフルエンザと同等の扱い」にすることで、どのようなメリットが生じるのだろうか。それには現行のままではダメだという意見を述べている人たちの言葉に耳を傾けてみることが必要だ。

数多くの新型コロナ患者の診療を行ってきた経験から、現在の扱いを今すぐ変えるべきだと力説する医師の主張を動画で見た。その医師によると、現行のままでは、外来で診ていた新型コロナ患者を入院させようとするにも保健所を通さねばならず、そうかと言ってその保健所にも連絡がつかない。保健所を通さず診療した医師が紹介先の医師と直接交渉して入院できるようにすべきだと言う。

診療所室の空の病院用ベッド
写真=iStock.com/LightFieldStudios
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「現状だと特定の医療機関しか診察できない」と言うが…

また現在の「新型インフルエンザ等感染症」の位置づけでは、診療所において感染疑い者を時間的・空間的に分離させる必要があるため、特に冬場の今は寒い外で待たせておかねばならず非常に危険。よって「今すぐ法改正もしくは省令を出してカテゴリーを変え、これまでの季節性インフルエンザのときのように診察室内に患者を入れ、そこで診察、検査できるようにすべきだ」としている。

この医師の他にも「今すぐ5類に」との意見を発する人の中には、「2類相当の現行のままだと、街のすべての医療機関で治療できず、一部の医療機関に殺到してしまう」というものがある。感染症法の縛りによって特定の医療機関でないと新型コロナの診察と治療が許されないため、病床が逼迫し医療難民が出てしまうという意見だ。

では、これらについてひとつずつ検討してみよう。