今回発表された論文で興味深いのは、ミネラルウオーターがナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性に与える影響についても調べている点だ。NK細胞とは、体内をパトロールし、ガン細胞やウイルス感染細胞を攻撃するとされるリンパ球の一種。免疫系のなかでも攻撃力が強く、異物を発見したときの対応も早いと考えられており、近年、その働きを強める食品の研究も盛んに進められている。

「私たちの実験では、ボランティア10名に水道水と日田天領水を1日2リットル、4週間飲み続けてもらい、それぞれの人から血液を採取。そこから取り出した白血球をガン細胞と反応させることによって、水を飲む前と後でのNK細胞の活性を測定・比較しました。結果は、日田天領水を飲んだ後、NK細胞の活性が有意に増加するというもの。ミネラルウオーターが私たちの免疫システムを改善する可能性を示すものでした」

一般的に大人の場合、1日におよそ2.3リットルの水分が失われ、そのうち1.5リットルほどを飲料で補っているといわれる(その他は食事で補給)。そうした水分と健康の関係を科学的に検証する動きは、現在拡大中だ。毎日口にするものだけに、これまで経験的に実感してきたことが、論理的に説明されることは消費者にとっても大きなメリット。水の摂り方や選び方にもヒントを与えてくれる。

「アクアポリン研究はまだまだこれから」と言う北川博士に、最後に今後の研究目標について聞いた。

「今回はNK細胞の活性を測定しましたが、ヒトの細胞には多くの種類があり、例えば筋肉細胞や神経細胞の活性も関心の的です。またイネでの研究では、ミネラルウオーターがアクアポリン遺伝子の発現に影響することもわかっています。ではヒトではどうなのか。そうしたことも検証し、これからも水による健康増進、慢性疾患の治療について、その可能性を探っていければと考えています」

※すべて雑誌掲載当時