2年前に一人、出遅れた感があった野田は「急がば回れ」でポストトロイカ世代のトップを切って政権を手にした。
就任後3カ月で見えてきた野田流の特徴は、出番を待ち続ける忍耐力、深謀遠慮と用意周到さ、もう一つは自ら唱える安全運転型の舵取りである。
深謀遠慮と用意周到さは、衆参、「老・壮・青」の世代、親小沢・中間・脱小沢の3つのバランスに配慮した輿石東幹事長(兼民主党参議院議員会長)、平野博文国対委員長(元官房長官)、前原誠司政調会長という党人事に表れている。
難関だったTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加では、就任後初めて「脱安全運転」に踏み出したかに見えた。だが、よく見ると、安全速度を守り、大枠合意後の日米の発言食い違い問題でも国内の反対派とアメリカの両にらみで、安全確認を怠らない慎重運転である。
11年度第3次補正予算とTPP問題に決着のメドをつけた野田は11年11月14日、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の後、記者会見で「消費税増税準備法案の成立に全力を尽くす」と言明した。以後の最重要課題はこの法案と位置づけているのは間違いない。
消費税増税は11年8月の代表選で明言し、財政健全化路線を明確にしている。ギリシャやイタリアのような債務危機への懸念とともに、社会保障の財源確保も年来の課題だ。そのため、09年に成立した改正所得税法の付則で、消費税を含む税制抜本改革に必要な法制上の措置を11年度までに講じると謳った。この「法制上の措置」が増税準備法案である。
だが、11年9月の所信表明演説で「財政再建は決して一直線に実現できるような単純な問題ではない」と野田自身が述べているように、壁は高い。政権の12月危機説も取り沙汰されているが、回避できたとしても、増税準備法案と予算関連法案が焦点となる12年3月の危機が待ち構える。12月以降は視界不良となり、政権運営は予断を許さない。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時