たとえば、ドイツで子どもは赤ちゃんのときから親とは別の寝室で寝るのが普通です。
赤ちゃんは雑音がないほうが眠りやすく、またお母さんもゆったりと眠れるという考え方があるからです。そのため、ベビーベッドは子ども部屋に置かれ、夜泣きがあるたびに起きて、その部屋に行かなければなりません。
私もそうしました。しかし私は初めての育児で、赤ちゃんが自分のそばにいないと本当に不安でした。そこで、音で確認できるベビーフォンというグッズを利用しました。現在はベビーモニターという映像で見守れるグッズもありますね。
これらを使えば、別室にいても安心です。乳児のときから別室で寝かしつけていると、一人で就寝する習慣が身につくので、成長してからもスムーズに、夜はベッドに行って眠ってくれるようになります。
夫婦で「ママ」「パパ」とは呼ばないワケ
ドイツでは、子どもが小さくても夫婦の時間を大切にします。
ドイツ人夫婦が、お互いを「ママ」「パパ」と呼んでいるのを一度も聞いたことがありません。子どもが生まれる前から呼び合っている名前やニックネーム、あるいは「Schatz(シャッツ/宝物)」と呼んだりしています。
子どもが生まれても、夫婦の関係はそのまま変わることはないのです。
日本では、子どもが生まれたとたん、子どもが最優先となり、夫婦間での呼び名が変わってしまうことが多いと思います。
ドイツでも子どもはもちろん大事ですが、だからと言って夫婦の時間がなくなったり、二人の関係が変わったりすることを良しとはしないのです。
そのため、ドイツ人夫婦の家では、ベビーシッターを頼むことがよくあります。子どもの年齢は乳幼児でも小学生でも関係ありません。
夕方に夫婦二人で出かけ、コンサートに行ったり、映画を観たり、食事に行ったりと、“子ども抜き”の時間を持つのです。
お金を払ってでも、二人の楽しい時間を作ることを大切にしています。
無理をして親を演じる必要はない
子どもが中学を卒業するくらいの年齢になると、家庭によっては、子どもは留守番をして、夫婦だけで小旅行をすることもあります。
ドイツ人がこのように子どもと接するのは、「子どもと親は別人格である」という当たり前の考え方が根づいているからです。
子どもが生まれても、親の生活や楽しみや人生は尊重されるべきであり、無理をして親を演じる必要などない、と思っています。
演じるまでもなく子どもは愛らしい存在で、自然に湧き上がってくる愛情で大切に育てれば、それだけで十分なのです。
子どものほうも、幼いころから一人でベッドで眠ったり、親が二人で出かけたりするような環境で育つと、「自立心」が育まれていきます。
「自分は一人でできる」という小さな成功体験の積み重ねが、その後の自己肯定感の形成に大きな影響を与えていくのです。