「自分はエルメスのVIP客、バーキンを送るからお金を払って」

ロレックスの被害に続き、2度目の騙しに遭ったことを理解するには、やはり自ら真実を調べるなどして、心を整理するための時間を持つことが必要です。

そこで、「もし本当の弁護士であれば登録しているはずですので、ネットでも弁護士の検索はできますので、調べてみてはどうですか?」と伝えました。

信じた相手を疑うことは、たやすいことではありませんが、ひとつでも多くの客観的な情報を目にすることで、その真実に気が付く道標みちしるべになります。

後日、彼女は、「*藤」の名前で日本弁護士連合会のホームページなどで検索をしました。この名前の弁護士は、全国に100人以上いました。彼女は30代男がいないかを必死に調べましたが、該当者はいませんでした。「やはり、騙されたのかもしれません」と落胆のメッセージを送ってきました。

弁護士バッジと六法全書
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

雲行きが怪しくなってから半年たった頃、自称弁護士の男は音信不通になったわけではありません。ただし、女性には「(440万円を奪った男性へ)内容証明を作る」と言いながら、「忙しい」「海外にいる」などと言い訳して、結局、何もしていません。

彼女が執拗しつように返金を促すと、ついに「100万円を返す」と男は言い出します。そこで彼女は銀行口座を教えますが、まったく振り込みはありません。

それどころか「自分はエルメスのVIP客なので、バーキンのバックを送れるから、商品が届いたら、お金を払ってください」という新たな提案をしてくる始末です。偽の弁護士をかたるような人物です。もしかすると、偽ブランド品を送りつけ、また100万円以上を騙し取ろうとする可能性も高く、筆者は、商品を絶対に受け取らないようにお話をしました。

その後さらに彼女が執拗に返金をお願いすると、男は「今、滞在しているヨーロッパのある国で病気になって入院した」というメッセージを送ってきました……。

被害がほぼ確定した今、彼女は憔悴しょうすいしきった様子で次のように話します。

「誰も、周りに味方になってくれる人がいないなかで、彼だけが頼りでした。その時は、彼が神様のように映りました。しかし今振り返れば、メンタル崩壊しているところにつけこむ悪魔のような存在としか思えません。お金を取られたこと以上に、信じていたことに裏切られたことがとても悔しいです」

今、高級時計などの転売を持ちかけて、お金を騙し取る手口が横行するとともに、ハイエナのように、被害に遭った人から、さらにお金をむしり取ろうとする人もいます。

ネット上では、何者にもなりすますことができます。公式なホームページの情報でない限り、その肩書や名前は信じないでください。そして何より、身元のはっきしない人物にお金を渡すことがないようにしてください。