最低賃金引き上げも経営の重しに

これだけカンカンカンと最低賃金が上がった影響は大変大きい。ここ数年は毎年20円ずつ上がり、最低賃金で雇用しているパートタイマーの時給が上がったことに加え、正社員の給料も若干は上げたからです。パートの時給が上がったのに、時給換算すればパートと変わらない若い社員の給料を上げないわけにはいかないでしょう。そしてパートの時給が上がり、パートとして雇用するコストメリットがなくなりつつあります。

高卒の正規従業員の初任給が17万円とすれば時給にして1000円ぐらいですが、今、名古屋駅前の飲食店では時給1000円では人が集まりません。

その結果、高卒初任給とパートの給料が同程度になるか、下手をすればパートの給料のほうが高くなります。そうすれば働く側としては正規従業員でいるメリットがなくなるために辞めてしまうという悪循環です。

最低賃金の引き上げは中小企業を苦しめている大きな要因であり、各地の商工会議所は最低賃金の引き上げに猛反対しましたが、政府は耳を貸しませんでした。表向き、政府は審議会とか諮問委員会を立ち上げて決めていますが、最初から結果が決まっているようにしか見えません。

賃金は上がっても売価は変わらない

しかも最低賃金が上がったからと言って、商品の売価を上げることはできないのです。典型的な例は、スーパーで売られている食材などの日配品です。豆腐とかチクワとかは1個数十円で販売されていますが、そもそも売価が低いのに、納入先のスーパーから特売品としてさらに値下げを迫られる。

昨年、私も内実を見ていた日配品事業者が倒産しました。中国産の原材料を仕入れて製造し、大企業系列のスーパーに納入していたのですが、健康ブームや円安の影響で原材料費が3倍に上がったのです。原材料費が上がったことはスーパーも把握したのですが、売価を引き上げてはくれませんでした。日配品事業者の代わりはいくらでもいるからです。

つくづく思いますが、とくに大手スーパーには経営戦略はなく、特売品にして値段を下げるしか考えることができません。向こうのスーパーが50円で売ればウチは40円で売るというだけで、不毛な競争ですが、そのシワ寄せは日配品を納入している弱い中小事業者へ行くのです。この構造がアベノミクス以降に酷くなった印象です。