追い込む練習も意図を持ってやれば必要

「限界を超えて振り絞る」ことを習慣化するためには、現代の「合理的な練習」だけでは上手くいかないでしょう。

合理的な練習のお陰で、選手のパフォーマンス自体はレベルアップしています。それは間違いないのですが、しかし、自分の限界まで突き詰めることが難しくなるのも事実です。

ひと昔前までは、いわゆる「千本ノック」のようなヘトヘトになるまで追い込む練習をやらせていました。今では、このような練習には全く意味がないと主張する人も増えてきていますが、先にも述べましたが、私は決してそうではないと考えています。

相手との勝負であるスポーツにおいては、様々なプレッシャーが掛かります。だから、自分のペースで戦えることなどほとんどありません。そして、そういう厳しい状況、土壇場の場面でどれだけ力を発揮できるかは、普段の練習の時点で同等の経験をし、習慣化できているかどうかにかかってくるのです。

合理的な練習ばかりでは、限界まで力を振り絞ることが難しいだけではなく、心理的にも自分のペースを崩さずに行うことができてしまいます。しかしそれでは、「限界を超えて振り絞る」という癖はつきません。自分のペースでしか練習できない選手は、精神的に非常に脆く、窮地で自分の力を引き出すことができないのです。

だから体力的にひたすら追い込む練習も、きちんと意図を持ってやらせるのであれば、必要な練習と言えるのではないかと私は考えています。

選手に練習の目的を理解させる

選手によっては、なぜその練習をしているのか考えることなく、与えられたメニューだからこなしているだけという雰囲気を感じることがあります。また、集中力を欠いていて、とりあえずやっているだけという風に見える選手もいます。しかしそれでは練習の効果は低いままですし、どれだけ量を多くこなそうが成長にはなかなか繫がりにくいものです。

目的をきちんと意識しなければ正しく身体を動かすことはできません。誤ったやり方では何度繰り返してもただ疲れるだけで効果はない、ということを選手に伝えるようにしています。どうせ同じトレーニングを行うのであれば、効果が高い方が当然良いわけなので、目的をしっかりと意識することで質を高められるのだということを、繰り返し話します。

また、常に練習の目的を意識することで、与えられたメニュー以外に今の自分にどんなトレーニングが必要なのかを考える習慣も身につくでしょうし、そういう考え方を持つ選手が増えていくことで、意識の低い選手が目立つようにもなります。

こういう環境においては、意識の低かった選手も良い方向に引っ張られるようになり、結果としてチーム全体の意識も向上していくと考えています。練習環境が成長の場としてきちんと機能するためにも、選手一人ひとりに練習の目的を理解させることを重視しています。