※本稿は、于田ケリム、楊海英『ジェノサイド国家中国の真実』(文春新書)の一部を再編集したものです。
周辺住民に事前予告せず核実験を40回以上も実施
【于田ケリム(日本ウイグル協会会長)】中国政府は、東トルキスタンのロプノールに建設した核実験場で1964年から1996年にかけて、地表・空中・地下において延べ46回、総爆発出力(エネルギー)およそ20メガトン(1945年に広島に投下された原子爆弾の1000倍に相当する爆発出力)の核爆発実験を行ないました。
地表核爆発は12回、空中核爆発は11回、地下核爆発は23回にも達しています。しかし、いずれの場合も、周辺住民に事前に予告し、避難させるなどの安全対策は取っていません。それどころか、ウイグル人には、核実験自体知らせていないので、ほとんどのウイグル人住民は、核実験の事実も被害状況もいっさい知らずに暮らしています。
【楊海英(静岡大学教授)】1958年から青海省で原水爆工場の建設が始まっています。現地のモンゴル人、チベット人、トゥマト人を強制的に立ち退かせた跡地に工場が建設され、製造された原子爆弾が、新疆タクラマカン砂漠の東端にある「さまよえる湖」ロプノール湖畔に持ち込まれました。
あろうことか、かつてシルクロードで栄華を誇った「楼蘭王国」の地で、核実験が行なわれたんです。1990年代初期の現地調査でその近くを通った時、漢民族の人が「ここから早く出よう」と物凄く嫌がっていました。
私が「せっかく楼蘭に来たんだからゆっくりしよう」と言うと、「いや、核実験をしているから、ここにいたら白血病になって、髪の毛も抜けちゃう」と言うんです。そこで「あんたたちは食事に立ち寄るのも嫌がるのに、ウイグル人はここに住んでいるじゃないか! ウイグル人に核実験のことを知らせていないんでしょう!」と指摘して、激しい言い合いになりました。