国よりも麻薬王の持っている軍隊のほうが強い

難民問題は中東やヨーロッパだけではありません。中南米の国の人たちも続々とアメリカをめざしています。

2016年にトランプ大統領が当選した、ひとつのきっかけが、このアメリカの南の国境から流れてくる大量の難民でした。アメリカ人たちは、アメリカに地続きで入ってくるこの移民たちに、仕事は奪われるし、麻薬の問題は持ち込まれるし、で難民に対する恐怖というのが実態としてあったのです。

もちろん難民が労働力として入ってくるのはいい。でも、それに見合うだけの税金が取れるのか、社会的な保障やサービスを提供できるのか、そう考えると、なかなか大きな問題です。これがアメリカにとって大きな負担になっていることは間違いありません。

難民が発生するいちばんの原因は、やはり紛争や貧困で国が不安定化していることですね。そもそもそういう国は、国の制度が壊れているというか、国が国としての体を成していない。国よりも麻薬王の持っている軍隊のほうが大きくて、それって国としてどうなのかという国ばかり。そういうところから逃げ出したり、チャンスがあるからと出ていったりするのが難民なのです。

貧しい老人の手と空のボウル
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現在、世界の総人口は78億人といわれますが、その中でふつうに食べられない人は約8億人。10分の1の人が飢えているんです。実は世界には、満足に食べられる人がいなくて、政治も機能していない国がある。

そう考えると、日本は奇跡的にうまくやっている国であることがわかります。国を安定させられる国というのはごく一部。そうした国が先進国になるのです。

先進国になる条件は「歴史的背景」と「国民の意識」

では、なぜ先進国は、そんなにうまくできるのでしょうか。その要因は「歴史的背景」と「国民の意識」の二つにあると考えられます。

歴史的に見ると、現在の先進国といわれる国は、かつて帝国主義で国をうまく運営し、お金を稼ぐために、どんどん外に出て植民地をつくっています。国の安定には、やはり経済力という土台がある。

ただ、いくら経済力があっても、その経済をすりつぶす国もあります。たとえばノルウェーのような産油国は「これは公共のものだから」と、国がしっかりファンドなどに入れて運営していますが、アフリカの産油国は一族で富を所有して、やりたい放題になってしまうところも。この違いは何かというと、やはり国民の意識でしょう。国民一人ひとりが「国はひとつのコミュニティ」という意識を持っているのかどうかというのが大きい。つまり一つの「物語」を共有できているかということなのです。

そう考えると、日本は明治のころに国の仕組みを大きく変えて、国としてまとまってきた歴史をある程度持っています。アフガニスタンは、いまだに戦国時代ですから。

われわれ日本人は、そんな日本という国に飽き飽きしている部分もありますが、世界から見ると、これほど南北に広がっている国がひとつにまとまっているというのは、やはり奇跡的なことなのです。