A・B・Cの3つのランクの顧客がいたとしよう。Aランクの顧客と一つ契約できれば大きな売り上げにつながるが、なかなか成約してくれない。すると部下は、一つの契約のロットは小さいものの、成約しやすいB、Cランクの客ばかりをターゲットにしたがる。その結果、なかなか売り上げがアップしない。

これを改善するには、「次の3カ月はAランクの顧客を集中的に回れ」と具体的な行動指針を与える必要がある。その際にはAランクの顧客と一つ成約できれば、Cランクの顧客との契約20本分に相当するなど、具体的なデータを示すことも大切だ。そのためには会計データを使って顧客ごとの収益分析を日頃から行っておかなくてはならない。

そして、個々の部下の役割とスキルに見合ったさらにきめの細かい行動指針を与え、それに対する評価を行っていく。

たとえば、新人にいきなり「Aランクの顧客を攻めろ」といっても、どうアプローチしていいのか戸惑うだけだろう。半分はB、Cランクの顧客との折衝に当て、そこで腕慣らしをしたうえでAランクの顧客へ回るよう指針を与えれば、自信を持ってアタックできるようになる。

次に、顧客に提示するアプローチツール作成などの相談にのりながら、日々の部下の行動を評価していく。そうすれば、モチベーションの向上とともに、売上高という時間当たりの生産性も徐々にアップしていくはずである。

最後に経営者に一言。現場のリーダーに仕事を与えすぎず、部下の指導・評価に徹するようにさせてほしい。片手間のプレーイングマネジャーでは、マネジメント型の改革の担い手とはなりえない。彼らが的確なマネジメントを積み重ねれば、その成果は3カ月後、6カ月後の会計データに表れるだろう。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)