野田佳彦首相は、G20で「2010年代半ばまでに段階的に消費税率を10%まで引き上げる」ことを明言した。東日本大震災の復興財源とする所得税増税などの臨時増税と合わせ、野田政権下で増税一直線に進行中だ。それは、知識がなくて口だけうまい首相が3人も続く民主党政権が、常日頃から増税しか頭にない財務省にうまく転がされているからだ。
財務省が狙っているのは、当面の復興増税とその後の消費税増税である。3年間ほど復興財源のための臨時増税が行われ、その次に社会保障のための消費税増税というわけだが、これは野田首相が国際公約までしてしまった。この2つの増税は復興と社会保障に回るので、すぐには財政再建につながらない。その後に、本格的な財政再建増税という、三段階増税を目論んでいる。
まず当面は復興増税だが、復興基本法では、復興債を発行して、それを3年間くらいの短期間で償還する財源は増税とされている。経済学のクッション理論によれば、大震災のような一時的なショックに対応するのは課税の平準化、つまり長期にわたり償還する国債での対応である。100年に1回の大震災なら、増税ではなく、100分の1ずつ償還する100年国債が基本になる。ところが、復興基本法の国債発行は増税が目的で、「つなぎ国債」でしかない。
また、100年国債の発行なら、公共投資の基本に忠実である。財源に制約をつけず、復興が行える。そして、円高対策としてこの国債を日銀引き受けで行うのである。円高は海外に比べて過小な円の相対価値が高まったためだ。なら、日銀引き受けで円を増やせばいい。そして震災復興財源にもなる一石二鳥だ。いまだに「日銀国債引き受けは禁じ手だ」と信じている人が多いようだが、実は毎年行われているのだ。確かに財政法第5条には、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」と書かれている。しかし、その後に「但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」と但し書きが続いている。しかも、あまり知られていないが、11年度予算の予算総則において日銀保有国債分については、「財政法第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる」と明記されている。