「中国で絶大な人気を集めるのは、テンセントゲームズの『王者栄耀』です。“中国のスマホ版LOL(リーグオブレジェンド)”のようなeスポーツ系で、誰でも楽しめることから中国では圧倒的な支持を集めています。中国における『原神』は、アニメ風の美少女、美男子キャラが多数登場することから、一部の“日本のサブカル文化が好きなゲーマー”に支えられている側面が強いと思います」

今や韓国に引けを取らないeスポーツ大国に

中国では、10~20代の多くの若者が対戦型のeスポーツを楽しんでおり、eスポーツができるネットカフェが至る所にある。

日本でネットカフェと言えば、シャワーや寝床を確保するための空間だったり、好きな漫画を一気読みしたりする場所として利用される傾向が強いが、中国では最新のデバイスをそろえた、本格的な対戦型ゲームを満喫できる空間として発展している。来年、浙江省杭州市で開催される第19回アジア競技大会(アジア版オリンピック)からeスポーツが正式種目になるため、近年、中国ではネットカフェ経営も投資の対象になっている。

また2020年秋、コロナ禍を脱した中国・上海で第10回となる「2020 League of Legends World Championship」大会が開催され、決勝では中国と韓国のチームが熱い戦いを繰り広げた。2013年から2017年にかけては、決勝には韓国勢が必ず残っていたが、2018年以降は中国が頭角を現すようになる。中国政府もeスポーツを戦略的に捉えており、ゲーム産業における国際的な主導権を掌握するために産業育成に力を入れている。

ちなみに最近、中国政府がゲームを「精神的なアヘン」だと捉えている報道が日本でも物議を醸した。事の発端は中国国営メディアが「オンラインゲームは未成年者に看過できない影響を及ぼしている」と報じたことによるものだが、中国政府が懸念しているのは「未成年者への影響」であり、ゲーム産業全体を否定するものではない。

東京・渋谷駅前にある原神の巨大広告=2021年4月6日
筆者撮影
東京・渋谷駅前にある「原神」の巨大広告=2021年4月6日

中国のゲーム企業が日本を目指す理由

しかし、中国ゲーム産業の拡大は永遠には続かない可能性が出てきた。2021年上半期、中国ではゲーム人口が6億6700万人に達したが、その伸び率は前年比1.4%と微増にとどまった。

実は、中国のゲーム市場におけるユーザー規模は鈍化が続いている。中国音楽デジタル出版協会がまとめた「2021年1~6月中国ゲーム産業報告」は、「人口構造の変化に伴い市場競争が激化し、企業や製品に対する要求が高まる」と楽観を許していない。

これに対し、ビッグデータ分析の神策データ(北京市)がまとめた報告書(「中国のゲーム市場における課題と機会の分析」)は、「2018年~2020年までの3年間で、中国の自社開発ゲーム企業の海外での売上高が年々増加し、2020年には155億米ドルと33.3%の急成長を遂げた」と伝えている。