「サンガ」に入るまで正社員の経験はなかった

自己紹介をすると、1982年、福島県生まれ。サンガに入るまで、アルバイトをしながら演劇をしていて、正社員の経験はない。大学で演劇学専攻に進み、落語研究会に所属しつつ、小劇団で俳優をしながら台本も書いた。

最初は「笑い」をとる方面に進みたかったが、次第に興味が「心」に移っていく。同じセリフ、同じ動きを繰り返す役者という仕事なのに、上演ごとに出来が変わるのは何でだろう。劇場の空気、役者の体調、それぞれの相性、スタッフワークなど理由は一つではないが、特にメンタルが気になった。

台本であれば、登場人物の言動を動機づける部分だ。大学卒業後も舞台を続け、ラカン派の精神分析ゼミに通ったり、新興宗教に入った知人にインタビューしたりするうち「このまま舞台を続けていいものだろうか?」と迷っていたタイミングでサンガの求人を見つけた。

新興宗教系出版社潜入ルポのつもりで、アルバイトとして入ったはずが、いつの間にか正社員として14年間も働いていた。ちなみにサンガの扱うテーマは「新興」とは真逆の「最も古い」仏教だと、しばらくしてから知った。

サンガでは、営業・マーケティング・事業計画・編集と何でも担当し、海外ツアーの添乗員まで経験させてもらった。オールマイティーというより、どのスキルも「ぼちぼち」というところで、突出した武器はない。

別の働き口を探すためにハローワークへ

事業停止翌日もリストラされた元社員4人で朝10時からオンラインミーティングをした。関係各所への連絡や残務整理の話をしながら、お互いの様子を確かめ合った。

事業停止の情報が広まるにつれ、Twitter上に「応援メッセージ」や「惜しむ声」があふれた。「倒産する会社に何が起こっている?」と驚きつつ、単純にうれしかった。著者や関係者からも励ましの声が届く。「サンガの活動は人々の役に立っていた」ことを再確認するも、継続のために何をすればよいかわからない。

「サンガ新社を作るか」「別の道を歩むか」という2択だと思うが、まずは生活費の確保のためハローワークで失業手当の申請に向かう。途中「サンガ再生がんばってほしい」と著者からメッセージが届いた。

芥川龍之介の『蜘蛛の糸』で、天国から地獄へと垂れ下がる一本の糸をよじ登るカンダタの姿と自分が重なりドキッとする。「自分は助かろうとしている?」認めたくはないが、それも事実だ。

私は「サンガはいったんひと区切り。別の働き口を見つける。サンガ新社はサポートしよう」という考えだ。元編集長ら2名はサンガ新社設立に向かい、残る1人は仕事を探すようだ。

書類を書く人の手元
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失業手当の受給期間は300日(240日+60日)。「会社都合」の解雇であること、勤続期間「14年」が長期保証の理由だ。コロナの影響で、さらに60日延長されている。日本も捨てたものではない。多少の貯えもあるし妻と2人暮らしなので、当面の生活は困らない。まともな就活が39歳で初というプレッシャーもあるが、焦らずにいこう。