閉経後10年間で女性の骨量は15~20%も減少するといわれ、60代の女性の多くが若い頃の80%前後まで骨量が低下します。そして骨粗しょう症、または、骨粗しょう症予備軍の仲間入りをしてしまうのです。
また、若い頃と比べると腸でのカルシウムの吸収が悪くなることも、骨がもろくなる原因になります。
「背骨は要注意」骨折しやすい“4大部位”
からだのなかで折れやすいところは、次の4大骨折部位です。
●背中や腰(脊椎椎体)
●手首(橈骨遠位端)
●腕の付け根(上腕骨近位端)
●足の付け根(大腿骨近位部)
特に、知らないうちに折れてしまう背中や腰、骨折すると大ごとになりやすい足の付け根は要注意です。
もっとも多いのが背骨の骨折。背骨の骨折がやっかいなのは、気づかないうちに折れていることです。
背骨は、椎骨という小さな骨が積み重なってできています。椎骨の要となるのが椎体という部分です。骨粗しょう症になると、この椎体の内部がスカスカに変質してもろくなり、からだの重みや骨同士がぶつかりあうときの衝撃で押しつぶされて変形してしまいます。
知らないうちにグシャっとつぶれる。これが、骨粗しょう症による「椎体圧迫骨折」です。椎体圧迫骨折を起こした人は、その後の5年間の生存率が約80%というデータがあります。約5人に1人は5年以内に亡くなってしまうということです(Tsuboi M.et al,J Bone Joint Surg Br.2007.89.461-466.)。
「2人に1人が5年以内に死亡」太ももの骨折で高まる早死リスク
背骨の次に多いのが、足の付け根、大腿骨近位部の骨折です。
先ほど、背骨の骨折の5年生存率は約80%と紹介しましたが、大腿骨の骨折はそれよりも低く約50%。2人に1人は5年以内に亡くなるということです。
太ももの付け根の骨折も、背骨の骨折と同じように、高齢者にとっては死に至る怪我になります。というのは、太ももの付け根を骨折すると、要介護生活につながるリスクが圧倒的に高くなるからです。
大腿骨を骨折すると、治るまで歩けなくなります。長期入院すれば身体機能も衰えるため、骨折部分の完治に加え、骨折前のからだに戻すには相当な時間がかかります。
現実的には、骨折前のからだに戻せる人は全体の50%程度といわれています。日本人の死因第1位はがんですが、より骨折が怖いのは骨折が治らず、そのまま寝たきり生活がはじまる恐れがある点にあると言えます。
さらに寝たきりの状態が続けば、介護費用を払い続けるリスクも高くなります。たった一度の骨折が、貧困生活の入り口になるリスクも十分に考えられるのです。