世界の市場がアマゾンに食い尽くされかねない
当初は書籍販売を手掛ける小さなガレージ企業にすぎなかったアマゾンは、いまやネットショッピングで既存の小売業を脅かすだけでなく、2017年には米国の大手高級スーパー「ホールフーズマーケット」を約1兆5000億円で買収、ネットと実店舗の融合を推し進めている。また、スマートスピーカー市場には「Alexa」を投入、ビデオ・オン・デマンドサービスも展開するなど事業の多角化も急ピッチだ。
そんなアマゾンの日本への影響も強大だ。
運送業界の働き方を変えただけではない。2017年には生鮮食品の宅配にも乗り出した。これには、大手スーパーの危機感が強まっている。世界の市場がアマゾンに食い尽くされかねない勢いだ。
だが、アマゾンの市場寡占化には反対の動きも出ている。欧州連合(EU)はルクセンブルクの優遇税制を利用した税圧縮が「国家補助規制」に抵触するとして、アマゾンに対し約330億円の追徴税を課した。これに対してアマゾンはEUの下級審に当たる一般裁判所に不服申し立て、今年5月に、「不当な税負担軽減があったと証明できない」として追徴は無効との判決が出されている。
しかし、EUは最高裁に当たる欧州司法裁判所に上訴する可能性が高く、EUによるアマゾンへの税圧力は続くとみられる。
各国は「アマゾン包囲網」を敷くが…
世界で独り勝ちのアマゾンには、各国の規制当局もその肥大化を懸念し、市場の寡占が「独占禁止法」に抵触する可能性があるとして調査に乗り出している。米国では7月8日、ユタ州など37州・地域の司法長官が、グーグルのスマートフォンなどのアプリ配信サービスが反トラスト法(独占禁止法)に抵触しているとして提訴した。
これは「グーグルは消費者の選択肢を狭め、アプリ開発者から法外な手数料を徴求することにより、同社の基本ソフト、アンドロイド利用者の信頼を損ねてきた」と非難したものだ。
霞が関の金融関連の某官僚は「アマゾンが進出した後にぺんぺん草も生えないのは問題だ」と口にするが、それほどの事態だといっていい。
グーグル、アマゾンが日本の金融市場に本格参入するインパクトは計り知れない。