コロナ禍において東京五輪開催に批判的だったテレビ局などが“応援モード”にシフトしている。精神科医の和田秀樹氏は「地の利を活かして日本人選手は金メダルを量産し、その歓喜をテレビは連日報じるでしょう。菅政権はメディアが作る“東京五輪成功”のイメージに乗じて、熱狂が冷めぬうちに総選挙を断行して勝とうという目算でしょう」と指摘する――。

※本稿は、和田秀樹『コロナの副作用!』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

記者団の質問に笑顔で応える菅義偉首相=2021年1月18日午前、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者団の質問に笑顔で応える菅義偉首相=2021年1月18日午前、首相官邸

コロナ対策の「目的と手段」を国民に説明する国、しない日本

新型コロナウイルスの集団免疫の獲得を目指して独自の新型コロナ対策を行ったのが、スウェーデンです。スウェーデンは当初、集団免疫の獲得を目指してロックダウンなどの強い制限措置を行わず、街中でもカフェでも、マスクをしていない人たちが普段の生活を続けました。

その結果、他の北欧諸国と比べると死者数が多くなり、集団免疫を獲得することもできず、スウェーデンの集団免疫獲得政策は失敗したと言われています。

ただ、スウェーデンの新型コロナの死者数は約1万5000人と、確かに他の北欧諸国よりは多いですが、10万人を超えているイギリスやイタリア、フランスといったロックダウンを行った国よりもはるかに少なく、人口100万人当たりの死者数でもそれらの国よりやや少なめです。

スウェーデンの集団免疫獲得政策が、特にひどい失敗政策だったと言えるほど悪い結果だったわけではない、と私は見ています。

ではなぜ、スウェーデンは移動の自由を制限する道を選ばず、集団免疫の獲得を目指したのでしょうか。私は、スウェーデンが高齢者の多い国だからだと見ています。ロックダウンのような強い制限措置を行ってしまうと、将来の介護財政に悪影響が及ぶと考えたのです。

「高齢者が多いのだから、できるだけ外に出て身体を動かしてもらったほうがいい」

スウェーデンの政治家や専門家は、こう発想しました。一方、日本の政治家や専門家たちの中に、こうした発想はまったくありませんでした。これが現実です。

政治家や官僚、専門家への信頼度が高い国、低い日本

スウェーデンとは逆に、ロックダウンを短期集中的にやったのがフィンランドです。高齢者にとっても、1年間移動できないのと、1カ月移動できないのとでは後遺症の重さが違ってきます。

将来を見据えて、高齢者にできるだけ悪影響が及ばないような政策を、スウェーデンも、フィンランドも採りました。手段は正反対でしたが、目的は共通していました。

そして、目的と手段をきちんと国民に説明しているから、大きな反対の声はあがっていません。どちらの国も、そもそも政治家や官僚、専門家などへの信頼度が高い国として有名ですが、今回の新型コロナに対する政策を見ても、信頼に値する政治家や官僚、専門家たちだということが端からもわかります。

翻って、日本の政治家や官僚、専門家を見るとき、悲しい気持ちになるのは私だけではないはずです。