社長の代替わりは会社経営の鬼門だ。弁護士の島田直行さんは「自社の事業承継について楽観しているオーナー経営者は多い。しかし、対応を一歩間違えれば経営が傾き、後継者も窮地に陥る」という――。

※本稿は、島田直行『社長、その事業承継のプランでは、会社がつぶれます』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

2人の事業家の後ろ姿
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

会社の支配権は分散させてはいけない

ポイント① 会社の「支配権」は、一人の後継者に集約させた方がいい

事業承継における基本は、「後継者に会社の支配権を確実に渡す」ことだ。後継者が自由に経営の采配を振ることができなければ、事業を承継したとは言えない。

オーナーは自社株を保有しているからこそ、自社を所有し、支配することができる。代表取締役だから会社を支配することができるわけでは決してない。

いかに優秀な社長であっても、株主総会で解任決議をされれば、理由がなくても解任されてしまう。しかも解任決議には、一般的に過半数の株式を有する者の賛同があれば足りる。代表取締役だから安心ということではない。

だからこそ、会社の支配権が具体化された自社株を、後継者に集約させなければならない。「家族で支え合って」「家族の会社だから」ということで、子どもらに自社株を分散させる社長もいるが、絶対にやめたほうがいい。

むしろ家族間の対立を生みだす原因になってしまう。他の家族に経営に関与することをあきらめさせることも、ある意味では先代の役割だ。

少なくとも3分の2以上の株式を後継者に渡す

後継者には「自社株のすべてを集約させる」ことが理想だ。自社株が分散しており、すべてを後継者に渡すことがなかなか難しい場合でも、発行済株式総数の少なくとも3分の2以上は、後継者が持てるようにしていかなければならない。たとえば、定款変更を確実に単独で実行するには、発行済株式総数の3分の2以上を確保しておくべきだ。