男性セラピストが女性に性的サービスを行う「女性向け風俗」の利用者が増えている。女性向け風俗セラピストの柾木寛さんは「女性たちが悩んだ末に、リスクをおかしてまで女性向け風俗を利用するのは、それだけ性の問題に悩んでいるから。その原因はパートナーの男性にあることも多い」という。ホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾さんとの対談をお届けする――。(後編/全2回)
暗闇の中に立つうつ病の女性のシルエット
写真=iStock.com/Favor_of_God
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性風俗のカテゴリーにおさまり切らない存在

前編から続く

【坂爪】柾木さんの近著『「女性向け風俗」の現場 彼女たちは何を求めているのか?』(光文社新書)を読んで、女性向け風俗は、われわれがイメージする性風俗のカテゴリーにおさまり切らない存在ではないか、と考えさせられました。もちろん純粋な娯楽で利用する女性も多いのでしょうが、一方で福祉や性教育、男女のジェンダー格差などに深くつながる要素を持つ気がしたのです。

【柾木】いまも「女性向け風俗」と聞いて嫌悪感を抱く人は多いと思うんです。「女性がお金を払って、男性に身体を触ってもらうなんて……」と。

しかし私が知っていただきたいのは、女性たちが悩んだ末に、リスクをおかしてまで女性向け風俗を利用せざるをえなかった理由です。性交痛やセックスレス、閉経……。女性向け風俗のセラピストとして働き、6年になりますが、いかにたくさんの女性が性の問題に苦しみ、風俗店に連絡をしてきているのか、日々実感しています。女性たちが抱える悩みの原因が男性にあるにもかかわらず、自身の身体の問題と思い込んでいる女性もいます。また男性側は、そうした女性の悩みにほとんど気づいていません。だから、性交中に感じている演技をせざるをえない女性が増えてしまう。

【坂爪】性風俗という先入観にとらわれると、「女性向け風俗」を必要としている女性の本音や悩みが見えにくくなってしまうかもしれませんね。

【柾木】そうなんです。性行為は本来、互いの絆を深めるために行うべきでしょう。それなのに、性行為をすればするほど、女性側が置き去りにされて、パートナーとの間に深い溝を生む場合もある。女性向け風俗の現場で直面したのは、そんな男女の性のすれ違いの深刻さでした。