伝統的都市住宅「京町家」も根強い人気

京町家は、京都のまちなみ景観を特色付ける木造の伝統的都市住宅だ。長い奥行きの敷地を生かした職住共存に適した間取り、奥庭や坪庭など自然と季節感を暮らしに取り込む工夫、出格子や虫籠窓などの独特のデザインといった特徴がある。

京町家は、再開発などにより減少する反面、カフェやブティック、宿泊施設としても再利用されており、インバウンドにも好評だ。また、国内外富裕層からのセカンドハウスや投資用不動産としてのニーズに加え、セカンドオフィス、ワーケーション利用のニーズも増えている。京町家に対する関心が高まるなか、京都中央信金、京都信金、京都銀行、滋賀銀行、スルガ銀行などが、京町家ローンを取り扱っており、富裕層においても利用実績が積み上がってきているという。

京都で不動産投資が活発な3つの理由

なぜ、コロナ禍でも、京都では国内外の富裕層による不動産投資が活発なのだろうか。その理由には、①「京都のブランド力」、②「世界的なカネ余り」、③「外資系最高級ホテル」の存在、が挙げられる。

「京都のブランド力」

1つ目は「京都のブランド力」だ。「国際文化観光都市」京都のブランド力は絶大であり、多くの国内外富裕層にとっても憧れの場所だ。

例えば、アメリカの人気旅行誌『コンデナスト・トラベラー(Condé Nast Traveler)』の、世界で最も魅力的な都市を決める「Best Big Cities in the World」において、京都市が世界1位に選ばれている(2020年10月)。「ミシュランガイド京都2021」によれば、3つ星は「菊乃井 本店」「吉兆 嵐山本店」など7軒、2つ星19軒、1つ星84軒と星付きの飲食店は110軒にも上る。

早朝の祇園の街並み
写真=iStock.com/jmmlerma
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「世界的なカネ余り」

2つ目は「世界的なカネ余り」だ。コロナショックにより、日本だけでなく米国、欧州では、史上最大規模の金融緩和策と財政出動策がとられている。

このため、世界中で、規模が大きく流動性もある株式市場だけでなく、ミドルリスク・ミドルリターンで相対的に高い利回りが見込める不動産市場にもおカネが流れ込んでいるのだ。

もっとも、米中対立や中東情勢など地政学リスクも高まっている。このため、不動産においても、新興国や地方都市よりブランド力ある先進国の都市やリゾート地の不動産が選択されることになる。ロンドンやパリ、ハワイなどと同様に、日本では、東京や京都、ニセコの土地などが買われているのだ。

そして、金融緩和の恩恵を最も受けるのは、既に資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手に投資や開発を行うことができる国内外の富裕層となる。

特に、米中対立の激化や、中国による香港やウイグルでの弾圧、ミャンマーでの軍事クーデーターを目のあたりにした、香港やシンガポールなど世界各地の華僑や欧米投資家において地政学リスクへの不安が高まっている。その結果、政治的にも安定し市場規模も大きい日本の魅力度が上がっているのだ。ドルやユーロ建て資産が大半を占める華僑や欧米など海外投資家において、保有資産の分散、通貨の分散という観点からも、円建ての資産を京都の不動産で持つメリットが生まれているのだ。