私塾こそが日本を変革する

学校教育法第1条で定められている学校(一条校)には国から補助金が支給されているが、これもやめるべきだ。一条校は助成金がもらえる半面、学習指導要領に従った授業をしなければならないからだ。

私が提案するのは、国から学校への助成金ではなく、子ども1人当たり50万円程度の、入学金や授業料に充当できる「教育クーポン」を保護者に配ることだ。21世紀型の人材育成のために自分たちはこんな教育をしている、というのを各学校がプレゼンテーションし、それを参考に保護者と子どもが話し合って通う学校を決めるのだ。そうすると、優秀な人材を輩出している学校にはクーポンがたくさん集まるので、健全な競争が起こり、教育全体の底上げがされるという寸法だ。このやり方なら公立も私立も廃止となり、すべての学校が同じ条件で競うことになる。

最後に、私は「私塾」が突破口になると考えている。21年4月にマスターズを制覇したゴルファーの松山英樹をはじめ、スポーツや文化の分野では世界で活躍する日本人が多い。これはなぜかといえば、学習指導要領の外の世界、すなわち「私塾」で学んでいるからだ。21世紀は一人ひとり異なった育て方をしないと尖った人間が出てこない。

歴史的にいっても、幕末・明治に活躍した高杉晋作、伊藤博文、山縣有朋たちが学んだ吉田松陰の松下村塾だって、福澤諭吉や大村益次郎が学んだ緒方洪庵の適塾も私塾だ。松下村塾の現代版をつくるとしたら、教育現場で活躍するのは社会人だ。例えば、日本の伝統的な大企業で能力は高いのに腐りかけているエンジニアは少なくない。彼らに毎週半日くらい学校に来てもらって、システム開発をどう進めていったらいいかをファシリテートしてもらったらいい。

ほかにも、リクルート出身の起業家が起業に必要なことを教えたり、サイバーエージェントの社員がデジタルマーケティングの仕方を教えたりして、どんな新しいビジネスを始められそうかをディスカッションしたらいい。このような「私塾」が増えていけば、日本は大きく変わっていく。

(構成=山口雅之 写真=AFLO)
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