EUに支援を求めたモンテネグロ

欧州の南東部、バルカン半島に属する人口わずか62万人の国モンテネグロ。アドリア海を臨む風光明媚なリゾート地として知られるこの国をめぐって、中国とEU(欧州連合)が火花を散らしている。事の発端は、モンテネグロがEUの反対を押し切って中国から借款を得て、隣国セルビアとの間に高速道路を建設しようとしたことにある。

モンテネグロの首都ポドゴリツァの北にあるビオチェ村の近くで、中国の大手国有企業が建設を進めている=2019年4月8日
写真=AFP/時事通信フォト
モンテネグロの首都ポドゴリツァの北にあるビオチェ村の近くで、中国の大手国有企業が建設を進めている=2019年4月8日

モンテネグロにとって、隣国セルビアとの間に高速道路を建設することは悲願であった。セルビアとの交通アクセスが改善すればモンテネグロ経済が活性化すると期待されたためである。しかしその採算性の低さから、EUは高速道路の建設に一貫して反対し続けてきた。そこを巧みに突いてきたのが、習近平国家主席の下で拡張志向を強める中国だった。

結局、モンテネグロはEUの反対を押し切り、中国から資金援助と技術協力を得て2015年より高速道路の建設に踏み切った。中国輸出入銀行から受けた融資は6億8700万ユーロ(約1000億円)だったが、小国であるモンテネグロの対外債務はGDP比で10%以上も膨んだ。債務の返済負担は当然、モンテネグロに重く伸し掛かった。

この資金の借り換えが迫るなかで、返済負担に耐えられなくなったモンテネグロがEUに対して支援を要請した。こうした状況を受けてEUの執行機関である欧州委員会のピーター・スタノ報道官は4月12日の会見で、モンテネグロが中国から借りた開発資金をEUが肩代わりすることはないとしながらも、何らかの援助を行う可能性に言及した。