日本で政権交代を起こすにはなにが必要なのか。国際政治学者の三浦瑠麗氏は「世の中は、民主党の失敗についてばかり分析する傾向にある。だが、政権を取りたいならば、もっと民主党の成功について分析する努力が必要だろう」という——。(後編/全2回)

※本稿は、三浦瑠麗『日本の分断 私たちの民主主義の未来について』(文春新書)の一部を再編集したものです。

2017年10月18日、選挙運動で小池百合子東京都知事が支持者に挨拶。
写真=AFP/時事通信フォト
2017年10月18日、小池百合子東京都知事が支持者に挨拶。

政権交代するための3つの手法

過去の経験に照らせば、自民党が一部であるにせよ中央あるいは地方で権力を失ったのは、1993年の細川政権、2009年の民主党政権、2010年からの維新ムーブメント、小池旋風によって都議選で都民ファーストが躍進した2017年の4回である。

いずれも「改革保守」イメージがついた勢力に負けており、2009年には民主党が有権者の勘違いも含めて外交安保リベラルのみならず中道からリアリズムまでの票を取れたことが政権奪取のカギだった。

世の中は、民主党の失敗についてばかり分析する傾向にある。だが、政権を取りたいならば、もっと民主党の成功について分析する努力が必要だろう。日本における政権交代のカギは、議員の数による連合ではない。明確なメッセージを発することのできる勢力が、有権者の価値観と合った方向性を打ち出した時に、政権交代が起きるからだ。

すでに振り返ってきた通り、政権奪取して多数派を取りに行くためには、ある程度自民党のことも評価している有権者を取り込む必要がある。

多数派形成の戦略を前提とすると、一番わかりやすい考え方は、自民党政権の度重なるスキャンダルに対して、よりクリーンな政治のイメージを掲げ、有権者に刷新を選択してもらうことである。

二つ目は、安倍政権や菅政権がすでに掲げている経済成長のための構造改革や女性活躍支援に、より強くアクセルを踏み込むというもの。三つ目は、世襲反対や国会改革などの先進的なイメージを前面に出したやり方である。

実際にはシングル・イシューではなく、この三つをすべて組み合わせなければ、多数派の形成は難しいだろう。しかし、これらの手法は政党の価値観が有権者の大半とずれている場合には効果を上げにくい。また、二つ目の手法を取ろうと思えば経済リアリズムにおいて自民党よりも突出していなければならない。