「有名私大付属に入れれば子育て終了」が危ない理由

わたしは27年間中学受験の世界に携わり、子供たちに教科指導をしているが、「中学入試状況」はそのときどきの大学入試に多大な影響を受けることをひしひしと感じている。

たとえば、ある中高一貫校の難関大学合格実績が飛躍的に伸びた年があれば、「わが子もこの学校へ行かせれば難関大へ進める」と考える保護者が増え、翌年の一貫校の受験者が激増し入試難度が高くなるものだ。

入学すれば基本的には大学まで進むことができる大学付属中学・高校の近年の人気ぶりは、先ほど2つ挙げた近年の大学入試状況を踏まえれば、当然の結果といえるのだ。

しかし、ここに「大きな落とし穴」が潜んでいる可能性がある。

矢野耕平『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)
矢野耕平『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)

わたしはこの2月に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)を上梓したが、その中の一部をここに引用したい。大学付属校の過熱化に警鐘を鳴らす内容だ。

〈大学付属校人気に拍車がかかった結果、それらの学校の「偏差値高騰」が中学入試で起きているのです。たとえば、香蘭女学校。この女子校、高大連携プログラムでつながっている立教大学への関係校推薦枠が最大97名あります(卒業生は例年160名程度)。意外と知られていなかったこの推薦枠が同校の入試回数増などをきっかけに広く知られるようになり、一気に難化しました。四谷大塚の合不合判定テストの偏差値一覧表(合格率80%ライン)の推移に目を向けると、5年前の2016年度に偏差値51とされていた同校は、2020年度には58と、7ポイントも上昇しています〉

何も考えずに、付属校人気に乗ってしまうのは危険

〈この付属校人気には注意が必要です。

わたしが偏差値に対して、物価や株価に用いる「高騰」などという表現を用いたのには理由があります。偏差値は外的環境によって、いともたやすく変動するものだからです。

いまの小学生たちが大学入試を迎える頃は大学入試改革から何年も経過していて、入試制度も落ち着きを取り戻している可能性が高い。言い方を変えれば、有名大学付属校の中学入試で合格できる力量があるならば、わざわざその系列大学に進学するのは(学力面で)「もったいない」と感じるような時代がやってきそうなのです。ここは一歩立ち止まって冷静に学校選びをしたいところですよね〉

保護者は、「わが子にいい人生を送らせることができるはずだ」と大学付属中学・高校を選択したにもかかわらず、中高6年を過ごす間に時代状況が変化して、付属校に以前のような輝きやブランド力が失われる可能性がある。また、努力すれば学力面がもっと伸びたのに、エスカレーターの付属校にはいったばかりにサボってしまい、尻すぼみの人生になってしまうリスクもある。