※本稿は、荒川和久・中野信子『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
「ステレオタイプ脅威」を払拭するのは至難の業
自分とは何か? 性別や属性、職業にまつわるステレオタイプに縛られない多様な自分を認めることで、個人がもっと自由に生きられるようになるのではないか、ということについて、独身研究家でマーケティングディレクターの荒川和久さんと、脳科学者の中野信子さんが考えます。
【荒川】世間一般ではいまだに「女性は直感で選ぶ、男性は理屈で選ぶ」といわれます。これも「ステレオタイプ」ですよね。
【中野】これ、本当は逆じゃないかと思うんですが……。
【荒川】図表1のように、男女それぞれステレオタイプがありますよね。「男は寡黙で地図が読めて、女はおしゃべりで地図を読めない」とか。僕が言うのもなんですが、よくしゃべる男なんてたくさんいます。
【中野】おしゃべりな男性って、けっこういますよね。
【荒川】男性はよくしゃべりますよ。逆に、みんな「俺にしゃべらせろ」と言うんですよね。
【中野】「俺の話を聞け」という感じですよね。
【荒川】まさに、「俺の話を聞け」です。
「血液型は性格とは関係ない」と言われても信じてしまうのと同じ
【中野】たとえば職人さんは寡黙な印象がありますが、技術のことになると、けっこうしゃべりますね。
【荒川】そうなんですよ、実際には違うんです。でも、こうやって「男は△△、女は○○」って分けて見せると、「あるある、そうだそうだ」ってほとんどの人が思ってしまうんです。
【中野】うーん。実際にはロマンティックでガラスのハートを持つ、恋愛重視の男性が「論理的」とされているわけですか……。
【荒川】血液型性格診断と一緒ですよ。「血液型は性格とは関係ない」と何回言われてもみんな信じているように、このステレオタイプを払拭するのは至難の業なんだと思います。
【中野】私もステレオタイプを払拭することはだんだんあきらめてきていて、ステレオタイプのとおりに誘導したほうが得するんじゃないかな、と思いはじめています……。