コロナ禍の経済危機が、外国人労働者などの弱い立場の人を襲っている。最新刊『アンダークラス』(小学館)で、外国人技能実習生の問題を取り上げた作家の相場英雄氏は「外国人労働者の問題だと思わないほうがいい。むしろ大企業に勤めている人ほど事態は深刻だ」という――。(後編/全2回)
高度経済成長期は若手社員でも月賦で新車を買えた
(前編から続く)
——『アンダークラス』では、GAFAなどの国際企業の下請け、孫請けとしての仕事を受ける日本の中小企業の実態についても書いていますね。
実は、私の実家は、新潟県燕市の町工場だったんです。元請けの企業から、どんなふうに注文がきて、どう締め付けられているか。元請けと下請けの利益構造を肌感覚で知っていました。
ぼくが子どもだった高度経済成長期は、設備投資をしても利益が伸びると見通しが立てられました。若い社員が月賦で新車を買えた時代です。ぼくも社員旅行で、みんなと一緒に貸し切りバスで温泉旅館に行きました。
コストカットのしわ寄せが、技能実習生にきている
いまや、ローンを組んでクルマを買う若者なんてほとんどいないし、社員旅行を催す余裕がある町工場は少なくなってしまった。
しかも景気が一向によくならない。中小企業は、コストカットをしなければ、生き残れない。そのしわ寄せが、安価な労働力として受け入れた外国人労働者にきていたんです。コロナ禍で、より苦しい状況にある外国人労働者の境遇がひとごとだとは思えなかった。
実家の町工場は、1985年の円高不況で倒産しました。当時18歳で上京したぼくは、新聞社の奨学生として働きながら専門学校に通いました。朝夕刊の配達に集金、それに勧誘のノルマもありました。ノルマが達成できずに、賄いの食事を抜かれたり、「使えないヤツ、文句を言うヤツは出て行け」とも言われ、住んでいた寮を追い出されたりした経験もあるんです。
ぼくは日本人だから言葉がわかったけど、技能実習生は悪徳ブローカーに借金を背負わされ、自分が置かれた状況も言葉もわからないまま、路上に放り出されるんです。その悔しさや不安は想像にあまりある。あまりに扱いがヒドすぎる。