その警戒心があったからこそ、JPモルガンは日本のバブル崩壊で全くダメージを受けず、(逆に利益を上げられた)日本で唯一の金融機関だったと思われるのだ。その成功体験からしても、普通なら私は再度、強い警告を発していたはずだ。
日銀は引き締めを行えない
「べき論」としては、以上述べてきたように、日銀は早急に引き締めを行うべきだろう。バブルの際に引き締めが遅れた失敗を2度と繰り返してはいけないのだ。再度同じ間違いを犯せば、バブル後の「失われた30年」が、今度は「失われた50年」となってしまう。そうなれば日本は間違いなく、世界の4流国への仲間入りだ。
そう考えると、日銀は「金融引きしめ」を行わないまでも、この歴史的な超金融緩和状況を中立程度に戻そうとするのは当然だろう。それは株価の暴落、もしくはかなりの大幅下落を意味することになる。
しかしながら、日銀が、今、引き締めが出来るかとなると、極めて疑問である。引き締めの手段としては、保有株ETFの売却、保有国債の売却(=過剰流動性の吸収)、政策金利の引き上げが考えられる。
しかしながら、株と国債のマーケットにおいて、日銀は、今やモンスターになってしまっている。どんな市場でもそうだが、モンスターだった買い手が、売りに回れば、間違いなく大暴落だ。中央銀行自身が大量保有しているものの値が下落すれば、彼らは債務超過になり、その発行する通貨は暴落、紙幣は紙くず同然となってしまう。当然、日本売りだ。
だからこそ、私が金融マンだった頃は、「中央銀行たるもの価格変動の激しいものに手を出してはいけない」が鉄則であり、それを世界中の中央銀行は守っていた。通貨の安定が中央銀行の基本のキだったからだ。
しかし異次元緩和で、日銀は株や国債を買いまくり、世界段トツのメタボになってしまった。もはや金融引き締めなど出来ない。私が、いつも「日銀にはもう出口がない」と言っている理由だ。
以上の理由から、日銀は、バブルの反省がありながら、引き締めを行いたくても出来ず、株価の上昇を、口を開けて傍観せざるを得ないのだ。
それが、私が当面は株価の上昇が続くだろうという理由である。
「株購入はこわごわとすべき」理由
ビジネススクールでも習ったし、また金融界でも常識だったことは「短期金利は中央銀行が、長期金利は市場が決める」だった。私の長きにわたるマーケットでの経験からしてもそうだ。世界の中央銀行も、いまだその認識のはずだ。
だから世界中で日銀以外に長期金利を「政策目標」として掲げている中央銀行はない。日銀自身も2016年11月まで「教えて!にちぎん」という一般国民向けのホームページに「中央銀行は長期金利を思いのままに動かせない」と書いてあった。なのに、長期国債の爆買いを始めたせいか、辻褄を合わせるために、突然「長期金利はコントロール出来る」と書き換えた。