特記すべきは38度以上の発熱で、16%と高い頻度で観察された。発熱は小児で熱性けいれんなどを起こすことがあり、ワクチン接種では敬遠される副反応であり、今後の課題となるであろう。

MGHでも、副反応の追跡調査を公開しており、大体治験と同様の結果が出ている。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、ファイザーワクチンによるアナフィラキシーの頻度は12月の時点で100万接種に11.1程度だった。インフルエンザの1.31程度に比べると高めではあるが、非常にまれであり、死亡者も出ていない。MGHでも2万6000人余りの接種者にアナフィラキシーは起きていないと報告されている。

アメリカでは緊急使用許可後、ワクチンの安全性をモニターするシステムが多数確立されている。FDA/CDCのVAERS、CDCのV-SAFE、NHSN、VSDなど、FDAのBESTなど合計9つ、軍関係のものも含めると11存在する。

接種が進むに従って情報が蓄積され、広くシェアされるようになっており、接種後これらへの登録も促された。特にVAERSは医療機関を通さず、患者本人が入力して報告することもできるシステムであるためアクセスがよく、多くのリポートが入力される。

長期的な安全性は今後の検討課題

長期的な安全性であるが、接種による免疫異常が原因として考えられているギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎などは6週間以内の発症がほとんどであるが、ファイザーやモデルナ社のワクチンでは今のところこれらの疾患は報告されていない。

アストラゼネカのウイルスベクターワクチンでは、横断性脊髄炎が発生し、治験が一時中断されているものの因果関係ははっきりしていない。ウイルスベクターワクチンに関しては、ベクターそのものに対する免疫応答も誘導するため、これがワクチンの再投与や同様の手法を使った遺伝子治療にどのような影響を与えるのかなどは今後の検討事項といえるであろう。

mRNAやウイルスベクターワクチンの痕跡は、接種後数週間後にはいずれも検出できなくなっており、宿主に組み込まれるなど遺伝的な影響は今のところ最小と考えられている。今までと同じ技術を使った後発のノヴァヴァックス社またはサノフィ社の不活化ワクチンを待つとしても、新規Matrix-Mまたはあまり一般的でないAS03というアジュバントが使われていることがあり、安全性の検討の余地は残る。

通常、筋肉注射のワクチンでは上気道粘膜面の免疫応答は誘導されにくいため、ワクチンを接種して感染自体を防げるかはまだ疑問が残っている。ワクチン効果は100%ではないこと、効果の持続期間はまだ確立されていないため、ワクチン接種が終わっても感染対策は今まで通りに行うことが重要である。

現在MGHではマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保など厳しい感染対策が敷かれているが、副反応の一部はコロナウイルス感染の症状と一致しているため、副反応が3日以上続く場合や副反応には見られないコロナ感染の症状が見られた場合には即座にPCRでの検査を受けるように詳細に対応が決められている。

(左)接種終了後、3日間毎日副反応をチェックするメールが来て、アプリで返答するようになっている。/(右)接種が終わっても、感染対策を怠らないように指導がある
図版=筆者提供
(左)接種終了後、3日間毎日副反応をチェックするメールが来て、アプリで返答するようになっている。/(右)接種が終わっても、感染対策を怠らないように指導がある