緊張感を欠いた政権幹部が真っ先に制裁を加えられてしかるべき

さる1月7日から2度目の緊急事態宣言が発出された。しかし朝の通勤時間帯、駅構内も電車内も多少混雑は軽減されたとはいえ、前回宣言時と比べれば風景が大きく変わったようには見えない。繁華街の人出もさすがに少なくなったものの激減とまではいかず、宣言発出後2週間を経た今も、緊急事態を肌で体感できる状況とは言えない。

この“日常”とあまり変わらない状況を“気の緩み”であるとか“自粛疲れ”と評して、現下の感染拡大が緊張感を失った私たちの行動に起因するかのような論調も見られるが、そもそも決定的に緊張感を欠いていたのは菅政権である。感染拡大が懸念されていた冬を迎えるというのに持論であるGo To政策に拘泥し続け、さらに自ら大人数の忘年会に参加していた菅首相本人はじめ、政権の中枢が最も緊張感を欠いていたという事実を、いま一度、皆で確認しておく必要がある。

もし緊張感を欠いた国民の行動が感染拡大を引き起こしたと言うのであれば、感染拡大を引き起こす人の移動と活動を促進し奨励する政策に拘泥し続け、国民に油断と緊張からの解放を積極的に促してきた政権が、まずその責めを負うべきであるし、「緊急事態宣言に基づき強力な対策を講じる」として国民に対して私権制限や罰則を適用し刑を科すというのであれば、その議論をする以前に、これら緊張感を欠いた政権幹部が真っ先に制裁を加えられてしかるべきではないか。

今回の感染症法改正案には立法事実が存在しない

今国会で審議される感染症法改正の政府案によれば、軽症者らに宿泊・自宅療養を義務付け、療養先を無断で抜け出すなどした場合、知事が入院を勧告。現在公費で負担しているものは、療養に応じず入院勧告の対象となった人については自己負担とする方向であるとのこと。さらに入院の勧告・措置に応じない場合は100万円以下の罰金を科すのだという。これには言葉を失った。

入院拒否以前の問題としてまず現在、入院したくてもできないほど医療体制が逼迫ひっぱくしている状況を政権は理解しているのだろうか。症状が出て複数の医療機関を受診しても検査にたどり着けずに右往左往している人が、いまだに多数存在する事実を把握しているのだろうか。

病院の点滴
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そもそも入院拒否事例がどれだけ存在し、そしてその入院拒否者が感染拡大の主因となっているとの事実はあるのか。政府はこれらを精査しているのか。データを示せるのか。答えはノーだ。感染経路が追えない感染者が急増しているという事実が、「入院拒否者が感染拡大の核となっているゆえに罰則を設けるべきだ」との立法事実が存在しないことを、くしくも立証してしまっているからだ。つまり入院や自宅療養拒否者に罰則を科すことを新たに規定する今回の感染症法改正案には、立法事実が存在しないのだ。この点もしっかりと皆で確認しておきたい。