社内コールセンターを充実させる

トヨタの場合、通信機器、通信設備に関しては手厚い。パソコンについてもほぼ5年に一度は買い替えるようにしてきたし、部署によってはさらに頻繁に買い替えてきている。また、自動車開発のエンジニアが自宅で仕事をする際、大型モニターが必要になる。そのような部署には、会社のモニターの持ち帰りを許可した。

加えて、大切なことがある。

在宅勤務の生産性向上に大きくかかわるのは通信サポート体制だ。

トヨタはパソコンや通信操作に詳しくない従業員についてサポート体制(社内コールセンター)を充実させている。この部分は在宅勤務を始めた企業は見習うべきだろう。サポートを充実させると、生産性はもちろん、モチベーションも上がる。

コールセンター
写真=iStock.com/eakrin rasadonyindee
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北明はサポート体制についてはこう説明する。

「現在(2020年10月)、事技系の6割が在宅で仕事をしています。うちにパソコンがない人もいましたし、奥さんと共用だから仕事には使えない人もいました。そういう人には会社がパソコンを貸与します。

そして、私たちはサポートします。故障したとか、扱い方がわからない人のためにコールセンターを持っているのですが、今は160人体制です。30数カ所のコールセンターがあるのですが、日々、大忙しで、増員も考えているところです。また、パソコンを貸す前に、うちの社員が使えるようVPN認証などのセッティングもしています」

すぐに・必ず・つながること

社員に貸与するパソコンはサーバー側で処理のほとんどを行うシンクライアントのものになっている。仮にパソコンが盗まれたり、なくした場合でもリモートでデータを消すことができる。単にパソコンを買って、それを「持って帰れ」では在宅勤務はできない。

野地秩嘉『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)
野地秩嘉『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)

いずれにせよ、パソコンや通信環境に対するストレスは大きい。しかも、設置、操作が不得手な人ほど強烈なストレスを感じている。サポートを充実させるのは重要だ。

なお、もうひとつ重要なのはコールセンターに電話した時、「すぐに」「必ず」「つながる」ようにすることだ。連絡してからオペレーターと話すまでに15分もかかったら、それだけでやる気がなくなってしまう。オペレーターとすぐに話すことができる通信サポート体制を整備しなくてはならない。

また、そもそも設置や操作がわからない人にはサポートスタッフが自宅まで出張することだろう。そういったかゆいところに手が届くようなサービス体制を作って初めてデジタル機器に対するストレスや不満は消えていく。

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