「生活の質」は向上している

それが一転して、在宅勤務になった。

レノボ・グループはコロナ禍の最中、世界10か国で在宅勤務について調査をしている。その結果が朝日新聞に載っていた。

「日本では在宅勤務の生産性がオフィスより下がるという回答が40パーセントとなり、各国平均の13パーセントを上回った」

自宅で働く若い女性
写真=iStock.com/MundusImages
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おそらく、日本の場合、どこの会社が調査をしても、「オフィスで仕事をする方が在宅勤務よりも生産性は高い」という答えが多いのではないか。そして、ビジネスパーソンのうち、男性はオフィス勤務の方が性に合うと思っているのではないか。みんなとワイワイガヤガヤ話ができるし、帰りに居酒屋で一杯飲むことができる。在宅勤務となると、そういった楽しみがなくなってしまう……。

ただし、よく考えてみてほしい。それまでの通勤実態と生活を考えれば、人間にとっては在宅勤務の方が「生活の質」は向上しているのではないか。

なるほどオフィスで仕事をする方が家で働くよりも生産性は高いかもしれない。しかし、多少、仕事の生産性が下がったとしても、企業も働く人間もできるかぎり在宅勤務を受け入れるべきなのではないか。

さて、調査に答えた人が「生産性が下がったと感じている」原因は次の3つだと思われる。

慣れていないこと、オフィスに比べれば整っていない通信環境、そして、仕事をする環境そのもの。

3つのうち、後者ふたつを改善していけば在宅勤務の生産性は間違いなく上がっていく。

5万人分の通信環境を整備しなければ

トヨタでは当初、事技系の在宅勤務は思うように進まなかった。それは通信環境の整備が遅れたこと、会議アプリの使い方に慣れていなかったことからきたものだった。

同社では社員数に見合った台数のパソコンがあればそれで済むわけではなかった。派遣されて常駐している人たちにもパソコンと社内情報にアクセスする権利を与えていたから、およそ5万人分のパソコンと情報に接する権利を一度に調達しなければならなかったのである。

一方、新型コロナ危機の前まで、同社が所有していた情報アクセス権付きパソコンは5000台に過ぎなかった。ほとんどは出張者が使うものだったのである。

在宅勤務へシフトするとなると、とたんにそれを5万人分に増やさなくてはならない。