前回の宣言時のように、人が減っていない

1月7日に2度目の緊急事態宣言が出されて2週間が経つ。ところが新規感染者数は高止まりで、全国の重症者数は1000人を突破、1日の死者が100人を超える日も出ている。感染拡大の「第1波」は2020年4月から5月にかけての1度目の緊急事態宣言による経済自粛によって封じ込めに成功した。ところが今回の2度目の緊急事態宣言の効果は今ひとつのように見える。なぜ、新型コロナウイルスの感染拡大を止められないのか。

首相官邸に入る菅義偉首相
写真=時事通信フォト
首相官邸に入る菅義偉首相=2021年1月20日、東京・永田町

最大の理由は、人出の減り方が1度目に比べて小さいことだ。NHKがビッグデータを使って分析した結果、都内のオフィス街の人出(1月8日、12日、13日)は、感染拡大前より40%以上減ったものの、去年の1回目の宣言時と比べると30%から50%ほど多いことが分かった、という。NHKの記事では「前回の宣言時ほどテレワークが行われていない可能性が高い」という専門家の指摘を掲載している。

なぜ、企業は2度目の緊急事態である今回は、テレワークへの切り替えをためらっているのか。

「飲食しなければ、出勤しても感染しないはずだ」

ひとつは、前回ほど危機感がないことだ。その原因は菅義偉首相など政府の「情報伝達の失敗」があるのは明らかだ。

菅首相は2度目の緊急事態宣言発出を決めた1月7日の記者会見で、「効果のある対象にしっかりした対策を講じ」るとした。そのうえで「その対象にまず挙げられるのが、飲食による感染リスク」だとし、飲食店に20時までの時間短縮、酒類提供は19時までとすることを要請する意義を強調した。

同席した政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長も、クラスター解析によって「食事に関するものが重要な感染のルートの1つだった」ことが分かっているとし、東京などで感染ルートが追えないものの「かなりの数は飲食に関係するものだというふうに思っています」と述べた。

この会見によって、飲食、特に飲酒を伴う飲食だけが感染リスクが高いという誤解が生じたのは間違いない。従業員に出社を求めている多くの企業が「飲食禁止」を打ち出し、取引先との夜の会食はもちろん、帰宅前などに居酒屋などに立ち寄ることを禁止した。

要は「飲食さえしなければ、会社に出てきても、感染しない」と考える経営者が多いのだ。記者会見で菅首相は「テレワークによる出勤者7割減」を呼びかけたが、企業の多くは、反応が極めて鈍かった。