危機感がない再びの緊急事態宣言

年明け後の2021年1月7日、2度目の緊急事態宣言が発令された。安倍晋三前政権が20年4月7日に発令した緊急事態宣言が全面解除されたのが20年5月25日だから、約8カ月ぶりの発令である。

1都3県への緊急事態宣言について、記者会見する菅義偉首相(1月7日)。
1都3県への緊急事態宣言について、記者会見する菅義偉首相(2021年1月7日)。(時事通信フォト=写真)

今回の緊急事態宣言の対象地域は、感染爆発に歯止めがかからない東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県。期間は1カ月間。1都3県では21年1月8日から酒類を提供する飲食店などへの営業時間の短縮要請を午後10時から8時に早め、12日からは飲食店全般に対象が広がった。今後は近畿・中部地方などの知事の要請に基づいて、さらに対象範囲が広がる。

それにしても、遅きに失した感は否めない。もともと菅義偉首相は緊急事態宣言の発令に消極的で、「専門家も緊急事態宣言を出す状況ではないという認識で一致している」と否定し続けてきた。再び緊急事態宣言発令となれば、ようやく持ち直してきた経済の落ち込みは避けられない。時短や休業要請に伴う補償金や協力金、給付金などで財政状況はさらに厳しくなる。ワクチン供給の先行きに薄明かりが見えてきたことだし、経済活動が休眠する年末年始を粛々とやり過ごせれば感染拡大に歯止めがかかるのでは、という希望的観測が官邸にあったに違いない。飲食の場が感染拡大のキーポイントということがわかってきて、当面は飲食店の営業時間短縮で乗り切る腹だったのだろう。