コロナ禍が「構造不況」の企業文化を動かすてこになった
その結果、3メガバンクは国内での人員、店舗の削減といったダウンサイジングを余儀なくされ、中長期的に取り組む「業務量削減」と呼ぶ、実質的な人員、店舗のリストラ策を打ち出さざるを得なかった。
それに追い打ちをかけたコロナ禍は「対面型」を重視してきた取引から「非対面型」への転換をいや応なしに迫り、デジタル領域への新たな投資も避けて通れない喫緊の課題となっている。
この点について、12月24日に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が発表した傘下の三菱UFJ銀行のトップ人事で、次期頭取に内定した半沢淳一取締役常務執行役員は「デジタルシフトで成長可能だ。顧客と現場を起点とした新しいサービスを作る」と述べ、課題となっている個人向けの国内リテール分野の再建に向けてデジタル化の加速を力説した。
それは単に「人余り」を解消するばかりでなく、多様な働き方を通じて行員一人ひとりの生産性を高める努力を同時進行的に進めなければならないことにもなる。その意味で、全くの想定外だったコロナ禍は「構造不況」に陥ったメガバンクに新しい働き方を通じて伝統的なビジネスモデルの変革、ひいては企業文化の変化をも促すことに作用する。
明治安田生命は「地方在住のまま本社部門所属」を募集
新しい働き方への取り組みは、生命保険大手でも進む。
明治安田生命保険は基幹業務に当たる総合職のうち転居・転勤のない約6000人の地域型の職員を対象に、在籍する地方在住のまま本社部門に所属して従事する職種を募集し、2021年4月の異動時から試験運用する。すでに2020年9月から若干名の募集を始めた。
コロナ禍で広く企業の間に広がったテレワークを活用した「リモート型」の職種として、本社の個人・法人分野で新契約の査定や契約保全、保険金・給付金支払い業務やダイバーシティ(人材の多様性)関連の業務に当たる。
この試験運用を経て2022年度から本格運用する方針だ。
生保大手は銀行大手や証券大手に比べて全国にきめ細かく営業拠点を展開しており、明治安田生命も全国に1000カ所を超える拠点を設けている。
試験運用するリモート型の職員は自宅での勤務のほか、最寄りの支店や営業所をサテライトオフィスとして活用し業務に当たる。