※本稿は、犬塚壮志『人気NO.1予備校講師が実践! 「また会いたい」と思われる話し方』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
「次に自分が何を話すか」ばかり考えていた
中1の頃の私は、まさに反面教師でした。どちらかといえば、「人が離れていく」理由に鈍感だった私が、「また会いたい」と思われることの重要性を痛感させられたのは、前職の予備校講師時代でした。
人前で話をする仕事を始めてから、もう20年近くがたちます。ただ、いまだに人見知りは直りませんし、初対面の人と会うときは緊張します。好きな話題になるとつい熱中し、「話しすぎてしまった」「ちゃんと伝わったかな……?」「退屈させてしまったかも……」と反省することもしばしばです。
そんなとき思い出すのが、中1の同級生たちとのやりとりでしくじったことであり、それを反省したことです。当時の私は自分の話し方に何の問題があるのか、原因もわからず、何をどうしていいのかわかりませんでした。
中1の私は、典型的な失敗をいくつも犯していました。なかでも最も深刻なのは、相手から好かれようと思うあまり、自分だけにしか焦点を当てていなかったことです。話を聞いてくれる相手を知ろうとせず、相手の話をろくに聞かないで、相手が話しているあいだ中、「次に自分が何を話すか」ばかり考えていたのです。
「どう話そうか」ばかり考えると失敗する
たとえば、中1の私はテスト勉強をしている同級生から「この問題わかる?」と聞かれたら、真っ先に「どう答えを教えようか」と考え、「どう話そうか」「解ける自分をどうアピールしようか」と自分が話す内容ばかりにフォーカスしていました。
でも、その結果、「おまえさ、話し方がきついんだよ」「押し付けがましいし、上から目線だし」と同級生から思われてしまっていたのです。冷静になって考えると、自分の不甲斐なさに落胆しますが、コミュニケーションがうまくいくはずはありませんね。
コミュニケーションは、自分のことだけ考えるものでも、相手のことだけを考えるものでもなく、両者の間に存在する「関係性」を同時に考えなければ成立しません。自分のことだけ考えてコミュニケーションを取ろうとしていた私から周囲の人がどんどん離れていってしまったのは、考えれば当然のことだったのです。もちろん、「また会いたい」と思ってもらえるはずもありません。