抜本的な構造改革に踏み切らず、その場しのぎに終始

大手証券アナリストは、「JR北海道と四国の危機の根源はコロナ禍の前から認識されていた。問題は課題を先送りしてきたことだ」と指摘する。

人口減少が叫ばれる中、実はJR北海道の鉄道輸送量は20年間変わっていない。このため、営業収益は1988年度が812億円、2018年度が819億円(そのうち運輸収入は705億円と712億円)とほぼ横ばいで推移している。

営業費が収入を上回る1327億円と1378億円だったため、結果として営業損失は516億円と559億円となっているが、鉄道以外の事業を伸ばした。その結果、全事業ベースの営業損失では1988年度の534億円から2018年度には419億円と100億円以上改善している。

では、なぜJR北海道の窮状が深刻化しているのか。

その一つは低金利時代が想定以上に長引いていることだ。JR北海道や四国などは分割時に6822億円もの経営安定化基金による資金支援が実施されるようになったが、その運用益が減少で赤字が埋めきれなくなった。

しかし、さらに問題なのが、「赤字路線の廃止に踏み切れなかった」(JR東日本幹部)ことだ。鉄道からバスへの転換など、抜本的な構造改革に踏み切らず、営業費のカットというその場しのぎに終始した。

無理なコストカットで事故多発、業績低迷で負のスパイラル

JR北海道は「冬は豪雪や寒さなどから保安事業が他の鉄道会社と比較にならないほどきつい。夏も暑さでレールが膨張するなど、脱線防止の苦労は絶えない」(JR北海道幹部)という環境にある。

近年多発した列車事故は「無理なコストカットにあった」(国交省)という指摘も多く、事故の多発は業績低迷に拍車をかける負のスパイラルに陥っている。

JR北海道は赤字路線の見直しを進め、北海道新幹線の札幌延伸後の2031年度以降は国の支援を受けずに経営を自立させる計画だ。2016年11月に、全路線の営業距離のほぼ半分にあたる10路線13区間を「単独では維持困難」と公表している。このうち5区間は廃止する方針と掲げている。残る8区間は、国や自治体の負担を前提に存続させる方針。

合計120億円規模の赤字の3分の2を国や自治体に肩代わりしてもらう形だが、支援を巡る国と北海道の協議は難航している。

JR四国も3月時点で147億円の現預金は6月末にも尽きかけ、約30億円の借り入れをした。こうした経営環境の悪化を受けて運賃改定の検討を開始。西牧世博社長は8月末の記者会見で2021年4月以降の改定に言及している。