滑走路なしで離着陸できる電動タクシー
「トヨタは今回、Joby Aviation社と協業するにあたり、生産技術の見地で、設計、素材、電動化の技術開発に関わるとともに、トヨタ生産方式(TPS)のノーハウを共有する。最終的には、高い品質、信頼性、安全性、そして厳しいコスト基準を満たすeVTOLの量産化を実現する」
垂直離着陸機とは滑走路がなくても離陸、着陸できる機体のことで、Joby Aviation社がリリースする機体はエンジン式ではなく電動のそれだ。
外見は6つのローターを持ち、上昇する時はローターの回転で浮かび上がる。水平飛行の際はローターが背後へ気流を流して推進する。今のところ飛行士をのぞいて5人の搭乗が可能な機体となっている。
トヨタがJoby Aviation社に提供するのは「自動車の開発・生産・アフターサービスで培った強み」。はっきりしているのは、トヨタ生産方式を生かして、生産性を向上させ、1ドルでも安く機体を作ることだ。
販売店のヤードを発着所にできるのではないか
電動の垂直離着陸機の開発はトヨタに限らず、世界中の航空ベンチャーが手掛けている。トヨタはカリフォルニアにある開発拠点からの情報で同社の事業を知り、安く作ることができれば世界各地で売れるものになると信じたのだろう。
たとえば現在、成田空港から都心までヘリコプターでは15分程度かかり、料金はひとり3万円から4万円だ。開発したeVTOLでこれをひとり1万円以下にすることができれば人々は確実に利用する。
また、トヨタは次のようなことも考えているのではないか。
首都圏から成田空港までの間には数多くの自動車販売店があり、各販売店はある程度以上の広さのヤードを持っている。eVTOLがリーズナブルな移動料金でビジネスを始めれば、販売店のヤードは都市と空港間の中継所兼発着所になりうる。
つまり、国内、海外へ飛行機で行く時、客は自分の車に乗って、自宅からもっとも近い販売店まで行けばいい。そこで、eVTOLに乗り継げば成田空港まで20分程度で行くことができるようになる。
空飛ぶモビリティはトヨタにとっても、販売店にとっても新しい収入が生まれることになる。