東京都渋谷公園通りギャラリーで、そんな歩みが鮮やかにキュレーションされた作品たちの前で小林さんはインタビューに答えた。私たちは展示されているアーティストの中でも最年少、福祉施設で暮らす06年生まれの勝山直斗さんの作品の前で足を止めた。
施設の部屋の壁一面に描かれた壁画は“普通”だったら問題行動とされてしまうかもしれない。でもその創作は、彼にしかできない独創的表現、アール・ブリュットと捉えられ展示された。
障がいは社会制度がつくり出している
世界中を回ってきた小林さんは「障がいは社会制度がつくり出している」と話す。
小林さんによれば、国や社会制度の違いで障がいの定義・認識が違うのだ。小林さんがタイのある村に行ったときに、どんなにアール・ブリュットの説明をしようとしても、伝わらなかった。
小林さんは片方の足がない人を指差した。しかし、村人にとっては一緒に生きているその1人で、「障がい」という認識がなかったのだ。
人もアートも同じでグラデーションの中にある。どんな物差しでもはかれない、「私は私」とありのままに創作されるアール・ブリュットはとてもパワフルだ。