石油需要改善とインフレ率上昇の可能性
一方で、景気が回復すれば、原油価格の回復が想定される。
原油価格はOPEC(石油輸出国機構)や非OPEC加盟国などの石油生産者が集まって構成されるOPECプラスが、原油価格の押し上げを狙って来年も減産を継続するとみられており、供給はある程度抑制されるだろう。
他方、ワクチンが開発され、景気が回復すれば、国際間の人の往来が回復し、ジェット燃料需要の回復が想定される。そうなれば、これまで緩んでいた石油需給が改善し、これが原油相場を押し上げる可能性がある。
そうなると、原油価格との連動性がきわめて高い米国の消費者物価指数は上昇し、インフレ率が上がるだろう。
景気が回復し、市場金利が上昇した場合でも、インフレ率の上昇ペースが早ければ、米国の実質金利は低下し、金利水準が上昇しても金価格は上昇する可能性が高まるだろう。こうなると、ドルがある程度堅調に推移した場合でも、金価格は上値を試すことになる。
強気の投資家がマーケットに溢れるタイミングが「危ない」
短期的に調整が続いている金価格だが、その背景には投資家がワクチン開発の材料に飛びついて、上昇が続く株式相場に資金を振り向けるために、手放してはならない金を売却しているからである。
現時点で投資家はかなり強気に傾いている。このような時は非常に危ない。
株価は今後も激しく上下動しながらも、長期的には上昇基調を続けるだろう。米国株はまず、2025年から26年ごろまで上昇するだろう。その後、1年から2年程度の調整を経るだろう。このときに、金価格が12年サイクルでピークを付けると考えられる。その後に米国株は再び上昇に転じ、2042年から43年ごろにピークを付けるだろう。
まずは今後5年程度の株価上昇時に、金にも投資しておくと、資産価値の変動を抑制でき、安心して運用を継続することができると考えられる。無論、金投資でキャピタルゲインも得られる可能性がある。
少なめに見積もっても、金は15年12月の安値である1045ドルから5倍程度上昇し、5000ドルに到達すると考えている。ちなみに、前回の金価格上昇時には7倍を超える上昇になっており、その前の1980年の際には22倍になっている。