これまでさまざまな媒体や講演などで長期分散投資をすすめてきた中野晴啓さん。50歳、貯金ゼロからのスタートでは老後資金は間に合わないかと思いきや、さにあらず。50代からの長期投資を始めるコツとは――。
考える女性
写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです

50代“ラスト昭和世代”の懐事情

以前私が出版した本に『退職金バカ」(講談社+α新書)というものがあります。読者ターゲットは今の私と同じ50代です。当該書では、退職金を後生大事に預金で抱え込むことも、初めて大金を手にして金融機関におだてられ言われるがまま金融商品を買うことも、適切な行動ではないと申し上げました。今の50代は退職金がもらえることを当たり前と考えている最後の世代、要するに我が国の20世紀高度成長期における社会文化を前提とした生き方が染みついた、ラスト昭和世代とも言えましょうか。

バブル期を体験した世代であり、楽観的人生観を引きずってきた一方で、もうひとつ特徴的なのが、戦後の高度成長時代を初期から生き抜いて来た親世代から教え込まれた格言、「預金は良いこと」「貯金しなさい」の価値観と行動規範を社会正義として受け入れてきた世代でもあるわけです。

「預金は正義」を堅実に実践してきた50代は、きっとそこそこの預貯金があることでしょう。しかし今や新たな富を産まない預貯金だけでは金融資産は殖えず、公的年金を加味しても老後資金は不足する、との論調で昨年話題をさらったのが政府の「年金2000万円問題報告書」(正式名称は金融審議会市場ワーキング・グループ作成の「高齢社会における資産形成・管理」)です。

他方で社会全体が毎年豊かになっていった高度成長期の一億総中流文化にバブル気分も付加された能天気系の50代には、「人生何とかなるさ」を口癖に根拠なき楽観に支配された結果、50歳貯蓄ゼロの人も少なくありません。