暗黒の青春時代「寝るとバカになる」と十分な睡眠取らせず
高校入学後は、母親から「寝るとバカになる」と言われ、十分に睡眠を取らせてもらえず、集中力が減退。中学までは友だちに「ウチの親、おかしくてさ、テレビも見せてもらえないんだ」などと笑って話せたが、高校では親の話をするのが恥ずかしくなり、誰にも話せなくなる。「昨日のテレビ見た?」と話しかけられても、「見てない」としか言えず、「日曜日に遊びに行こう!」と誘われても、「具合が悪くて行けない」と断るしかなく、友人たちとはどんどん疎遠になった。
大学受験を迎える頃には慢性的な疲労やだるさ、動悸、不眠、下痢、微熱などの症状に悩まされ、第一志望は不合格。不本意ながら、滑り止めの大学に通うことになる。
高橋さん自身は文学を学びたかったが、両親に「文学関係の仕事になんて、お前が就けるわけがないだろう!」と言われ、経済学部に入学。すると今度は、「経済学部なんて何の取り柄もない奴が行くところだ!」とバカにされる。
ある夕飯時、食器がぶつかるささいな音にいらついた母親が、「わざと音を立てて私に嫌がらせをしているんでしょう」と言い出したため、高橋さんは「わざとじゃないよ。毎日毎日文句や不満ばかり言われてたら、頭がおかしくなるよ」と返すと、「だったら精神病院にでも行けば!」と激昂する始末だった。
母親は10歳まで上海で裕福な暮らし、上流階級思考が抜けない
高橋さんが心療内科を受診したところ、うつ病と診断。医師に幼少の頃から両親に受けてきた虐待の数々を話すと、母親を連れて来るよう言われる。
後日、母親を伴って受診すると、医師は母親をたしなめた。母親は高橋さんに、「まさか自分の子どもに人格があるなんて知らんかったわ」と吐き捨てるように言った。
母方の祖父は、日本統治時代の上海警察勤務。母親は上海で生まれ、10歳まで上海で家政婦がいるような裕福な暮らしをしていたせいか、常識はずれなところがあった。
「上流階級思考の抜けない母は、自分の子どもも服やカバンやアクセサリーみたいな感覚だったのだと思います。だから私のせいで自分の品が落ちるのが許せなかったのでしょうね」
大学でできた友人に家庭のことを話すと、「子どもの頃はつらかったかもしれないけど、もういい加減そろそろ忘れなよ」と言われることが少なくなく、高橋さんは口をつぐんだ。