元工場経営者・トラックドライバーという立場で、さまざまなホワイトカラーに会うのだが、「なんでこんな決定をしたのか」「いまだにそんなことを思っているのか」と驚かされることが非常に多い。これはつまるところ、「現場」と「机上」とに、価値観や感覚に対する「ズレ」が生じていることを意味する。

その一例が、国土交通省が2014年、女性トラックドライバーの活躍を促進するために始めた「トラガール促進プロジェクト」だ。

愛用者にも言わせて「原点を忘れないでほしい」

「スチュワーデス」から「キャビンアテンダント」へ、「看護婦」から「看護師」へと、仕事におけるジェンダーの境をなくしていこうとする時代に逆行し、「トラガール」という性別でのすみ分けを進めるのは、時代錯誤以外のなにものでもない。

そこへさらに「女性ならピンクを入れれば興味を持つだろう」という浅はかな固定観念を働かせたがために、同プロジェクトのウェブサイトに目立つのは、やはり「ピンク色」。さらには「トラガール」のためにと「ピンクのトラック」まで開発するに至った。

この「トラガール」というネーミングによって、よく「橋本さんはトラガールだったんですよね」と言われるのだが、筆者には「トラガール」だった自覚は全くなく、現役女性トラックドライバーの中にも、「女性トラックドライバー=トラガールと呼ばれるのは居心地が悪い」という人も少なくない。

奇抜なネーミングをすれば、確かに存在感や知名度は得られるだろう。好調な「ワークマン」がその勢いに乗って「女子」という空白市場に挑戦することも決して悪いことではない。

が、源流が「働く人」である以上、安易に流行りのハッシュタグを付けたり、ジェンダーでの住み分けを図ったりするのは、やはりやめたほうがいいと個人的には感じる。とりわけ、長年「職人の味方」としてやってきたワークマンにとっては、「女子」との関連付けは慎重にすべきだ。

今後は、女性用製品の充実だけでなく、人気製品のジュニアサイズ化をも進めるという同社。元愛用者としてワークマンが今後、一時の流行ではなく世間の時流を掴み、何より原点を忘れることなく発展していくことを切に願う。

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