8月にワーク・ライフバランス社が公表した調査結果では、コロナ禍の中央官庁のブラックな働き方の大きな原因の一つが、国会議員にあることが明らかになった。日本の政治家はなぜ、これほどまでに紙の資料や対面での説明を求めるのか。日本の政治に詳しい、お茶の水女子大学教授の申琪榮さんに聞いた。

議員はやっぱり「紙が欲しい」

480人の霞が関官僚を対象にワーク・ライフバランス社が実施した「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」は、大きな話題になっていましたね。私も拝見しましたが、その内容には、「これほどだったとは」と半ばあきれ、驚いたところがたくさんありました。

お茶の水女子大学教授の申琪榮さん
お茶の水女子大学教授の申琪榮さん(写真=本人提供)

特に、省庁と国会議員のやりとりの89%がファクスだったというのは衝撃でした。私も、大臣や国会議員がファクスを多用することは知っていましたが、これほどまでとは思いませんでした。

議員はやはり、「紙が欲しい」のでしょうね。紙で受け取って、紙で読む。記録も紙で残す。メールで残ると困るやりとりもたくさんあるのでしょう。紙であれば、シュレッダーにかけてしまえば情報そのものがなくなってしまうので、安心感があるのかもしれません。だとすると、あえてファクスを廃止しようという動機は生まれません。デジタルが苦手な年配議員が多いせいでもあるでしょうが、こうした紙情報に対する変な安心感があることも、ペーパーレス化が進まない理由の一つでしょう。