日本の国会は備えができているのか

コロナ禍は、日本の政治が抱える問題点をあらためて明らかにしました。さんざん待たされた10万円の特別定額給付金ひとつ取っても、2週間程度で配り終えた韓国、台湾など、他国の意思決定やITインフラの違いを、誰もが痛感せざるを得ませんでした。

韓国はもともとIT化が進んでいますが、国会のオンライン参加はまだ導入されていません。ただ、国会関係者に感染者が出て、8月末と9月初めの2度に渡って閉鎖され、それをきっかけにオンライン化の議論が盛り上がっています。

日本の国会で感染がそれほど拡がっていないのはもちろん幸いなことですが、もしかしたら今後、クラスターが発生するかもしれないという前提で議論を始めなければいけないと思います。議員は高齢の方が多いので、もしクラスターが発生したら大変なことになります。

常に新しいアイデアを取り入れる仕組みを持つ

IT技術を駆使したコロナ対応が話題になった台湾では、39歳のIT担当大臣、オードリー・タン氏に注目が集まりました。ああいった人材を先端技術の必要なセクションに配置できる政府の機動性が素晴らしいですね。

彼女のインタビューを読んで面白いと思ったのは、「リバースメンターシップ」という、政府要人が「若手に学ぶ」システムです。彼女は大臣になる前、前IT担当大臣のリバース(逆)メンターとなって、ITのアドバイスをしていたんです。若手の新しい感覚を大臣が学び、常に新しいアイデアを積極的に取り入れる仕組みです。現在は、彼女自身が自分より若いリバースメンターからアドバイスを受けているそうです。

国の統治機構に必要なのは、内部にこうした、情報や人材の代謝・循環を促す仕組みを持っておくことです。こうした仕組みを持っておくと、今回のような危機の時に奏功します。

9月に発足した菅内閣では、コロナ禍で露呈したデジタル化の遅れを踏まえ、デジタル庁を新設して巻き返しを図ろうとしています。ピンチをチャンスに変えるような意識改革ができるかどうか。日本の政治家の力量が問われていると思います。

構成=西川修一

申 琪榮(しん・きよん)
お茶の水女子大学 ジェンダー研究所 教授

米国ワシントン大学政治学科で博士号を取得し、ジェンダーと政治、女性運動、ジェンダー政策などを研究。学術誌『ジェンダー研究』編集長。共著『ジェンダー・クオータ:世界の女性議員はなぜ増えたのか』(明石書店)など。女性議員を養成する「パリテ・アカデミー」共同代表。