「永田町の常識」がズレていても気にならない

日本の国会議員は、「ずっと国会議員」という人が多いですから、他の世界のことは気にしていないと思います。長く続く、事実上の自民党一党独裁の中で、慣行を見直すきっかけはあまりありません。政党間の激しい競争や政権交代が頻繁にあれば、見直しのきっかけになるかもしれませんが、今の選挙制度は圧倒的に現職に有利なので、残念ながらなかなか変わりません。独占企業のようになってしまい、「永田町の常識」が外の世界とズレていても気にならないというわけです。

コロナ禍で、自民党の若手議員が「オンラインに一部移行しよう」「投票をオンライン化しよう」といった提言をしましたが、結局まったく変わりませんでした。アンケートの自由記述欄にも、「一部の若手議員で積極的にオンラインのレクや会議(党の会議であっても)を推進する議員もおり、少し変化を感じた。ただ、(緊急事態)宣言解除後はそういったレクや会議もほぼ対面に戻ってしまったのは残念」(文部科学省20代)、「これまで対面しかなかった議員からオンラインレク、電話レクの依頼になったことも数件あったが、全く定着せず、5月頃からは完全に普段通りに戻った」(厚生労働省30代)といったコメントがありました。わずかに変化の兆しが見えた瞬間もあったようですが、あっという間に元に戻ってしまったのは大変残念です。

議員にとって、呼びつけるのは権力を誇示するチャンス

「(コロナ禍の)議員とのやりとりで、官僚の働き方の質を高めるための配慮を感じる変化が起きたか」という問いには、9割以上が「ない」と回答しています。それどころか、「不要不急のレクの設定」「地元支援者への特例措置を求める」「緊急事態宣言中に党の会議で役所(官僚)を呼びつける」「電話ですむ内容のために呼びつける」「数時間待たせる」など、目を疑うようなエピソードがたくさん挙がっています。

国会議員が一番プライドをかけているのは、地元の有力者に対して「必要な情報をいつでも取ることができる」と証明することです。官僚に質問し、「必要な情報を取ってこい」と命じる。それが権力の一つなのです。そして、官僚に、情報が書かれた紙を直接持ってこさせることは、権力を誇示するチャンスなんです。

官僚は官僚で、自分たちが進めたい政策は、議員の協力がなければ国会で通らないので、常日頃から議員との関係を良好に保とうとします。ですから、議員の機嫌を損ねないよう、求められた情報を与える。その代わりに、官僚側が進めたい政策を議員が文句なく通してくれる。この共生関係が大きなネックになっています。